女子バレーで課題が露わ。佐藤美弥を苦しめた「間」と魔のS4ローテ (3ページ目)

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by Karaya Masaki
  • photo by Kyodo News

 一方で、最後まで課題として残ったものもある。「魔のS4ローテ」と呼ばれた、セッター(S)が前衛レフト(ポジション番号の4番)に上がるローテーションを筆頭とした、セッターが前衛時の攻撃力の乏しさだ。

 ロシア戦での8連続失点と6連続失点、中国戦での7連続失点と6連続失点は、すべて「魔のS4ローテ」だった。さらに、ブラジル戦の第1セットで、20点に到達するまでに喫した連続失点はすべてセッターが前衛時のものだった。

「あれだけウイークポイントなローテがあると、試合としてはきつい」。ある選手は、中国戦後にそう漏らした。
 
 セッター前衛時が弱くなってしまう原因は明白である。主にセッター対角に入った新鍋理沙(久光製薬)がバックアタックに参加しないことで、攻撃枚数が最大でも3枚にしかならないからだ。強豪国はサーブで攻撃枚数を減らそうと仕掛けてくるため、相手の3枚ブロックよりも少ない枚数で攻撃していた場面も多い。

 3枚のブロックに対して、いかに多くの人数で攻撃を仕掛けて数的優位を作るかが世界の主流。まして、高さで劣る日本であれば、なおさら数的優位の状況を作らないと相手ブロックを打破するのは難しい。
 
 単純計算すると、サイドアウトの応酬だったとして、ローテーションは1セットで4周する。6ローテで1周なので、局面としては24ローテあり、そのうち半分の12ローテでセッターが前衛になる。今大会で日本が多用した、セッターとセッター対角の選手を同時に交代する2枚替えでしのげるのは、セッター前衛時の12ローテのうち3ローテだけ(※)。残り9ローテが弱いローテになる計算だ。

(※)スタメンの選手は、ベンチに下がった後に同一セットで1度だけコートに戻ることができるが、自分と交代で入った選手としか交代できない。そのため、2枚替えを使えるのは1セットで1回のみになる。

 セッター前衛時がこれほど弱点になるチームは珍しい。世界的に見れば、オポジットと呼ばれるセッター対角に入る選手、主にレフト側からの攻撃を担う2人のアウトサイドヒッターは、前衛でも後衛でも関係なく攻撃に参加し、常時4枚攻撃を仕掛けている。日本も新鍋が前衛の時には、4人が連動して攻撃できていた。

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