女子バレーで課題が露わ。佐藤美弥を苦しめた「間」と魔のS4ローテ (4ページ目)

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by Karaya Masaki
  • photo by Kyodo News

 しかし、新鍋が後衛に下がり、セッター佐藤が前衛に上がると、それが影を潜めてしまう。数的優位に立てず、複数のブロックに常にマークされて攻撃が決まらなくなってしまうのである。

 それでも、わずかに改善の可能性は見えた。オランダとの最終戦で、トスこそ上がらなかったが、新鍋がバックライトからバックアタックの助走に入り、トスを呼んだ場面があった。新鍋は言う。

「ライト側にブロッカーがいない状況があったので、呼んでいた。フロントのレフトや、後衛のアウトサイドヒッターがバタバタしている状況があったので準備はしていました」

 これまではブロックフォローを優先していたが、今大会ではセッターが前衛時に連続失点をしてしまうことが多いため、意識が変化したという。

「(前衛のアタッカーが)2枚の時に詰まることが多かったので、そこは私の責任でもある。セッターがいい状況で(トスを)上げられない時でも、ひとつでも多く選択肢があるようにと考えるようになりました」

 打数が多くなくても、バックアタックの助走に入ることで、相手ブロッカーは意識せざるを得ない。今大会は結局新鍋が打つことはなかったが、そこも武器にできるように磨いていくことは今後の大きな課題になる。

 大会直前のケガの影響で、大阪ラウンドでの2枚替えでの出場だけにとどまった黒後愛(東レ)を、前衛からでも後衛からでもどんどん攻撃するオポジットとして起用し、育てていってもいい。いずれにしても、セッター前衛時の弱点を消すためのセッター対角の選手のバックアタックは、これから強豪国と戦っていくためには必須である。

 11試合という長丁場の戦いのなかで得た収穫と、あらためて浮き彫りになった明確な課題。真価が問われる東京五輪までに残された時間は、300日を切っている。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る