サオリン、カナ...世界と戦える選手を育てる下北沢成徳・小川監督の教え (4ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari

 以前、男子バレーのエースとして北京五輪に出場した、山本隆弘氏からも同様の話を聞いたことがある。

「速いトスを打つなんて簡単ですよ。早めに助走に入ってスイングを速くすればいいだけですから。それより、高くなったトスをしっかり決めることのほうが大事。今の若い選手は、速いトスばかりを打っているからか、それができていない選手が多いように感じます」

 また、小川監督は選手の経験も重視しており、ユースやジュニアなどで代表に選出された場合は、その選手を派遣することを断らないようにしている。インターハイなどの大会期間中に抜ける選手もいるが、チームの利益よりも選手の将来を見据えて送り出すのだ。

 その分、普段出られない選手にも出番が回り、「選手層も厚くなると考えるようにしています」と言うが、分かっていてもなかなかできることではない。そんな監督の信念が、全日本の選手を次々と輩出する土壌となり、「スーパー女子高生」サオリンの誕生につながった。

 大山や木村沙織たちは卒業後も、何かにつまずいたり、大きな決断を迫られたりするたびに小川監督のもとを訪れた。彼女たちの心の故郷・下北沢成徳。日本の高校バレー界の中では少し異色な、選手の自主性と将来性を重んじる方針で、これからも結果を出し続けてほしい。

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