【女子バレー】眞鍋ジャパン新戦術で、宮下遥が覚醒 (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●写真 photo by Sakamoto Kiyoshi

 結果はもちろん大切である。だが今大会は、それ以上に評価すべき成果があった。それは昨年のこの大会で新セッターとしてデビューした宮下遥が、いったん全日本を外れたものの、再び復帰してファイナルラウンドではメインセッターとして活躍したことだろう。今大会も、予選ラウンドではロンドンで竹下佳江の控えだった中道瞳が主に先発していたが、ファイナル初戦のロシア戦からスタメンで起用され、ブロックランキングは全選手の中で18位、セッターランキングで4位につけた。

 眞鍋監督は、「ブロックがいいので、それで精神的にも余裕ができてトスも安定してきたのではないでしょうか」と合格点。昨年、宮下を「個人的にとても気に入りました。間違いなく日本のトップセッターになるでしょう」と評価していたブラジルのギマラエス監督も、「去年よりも良くなっている。昨年対戦した時よりも成熟しているし、チームでの責任感も増した。非常に上手くパスを散らし、いいところにいいタイミングでトスを上げている。精度も高くタイミングもよくなった。大きく成長し今も成長し続けている。非常に興味を持っているセッターです」とベタ褒めだった。

 宮下本人は、「この新戦術のねらいはトスの分散で、そこがセッターの役割だと思います。私はブロックを真ん中で飛んでいたので、ブロックに跳んだあと、なかなか切り返しが上手くいかなくて苦労しました。今大会の収穫は、技術どうこうよりも、連敗して苦しい時期がある中で、ひとりひとりがチームのために、みんなのためにと行動できたことです」と振り返った。

 また、グラチャンでは、本来MBが入るべきローテーションに入っていたサイドアタッカーは迫田さおりだったが、今大会ではサウスポーの長岡望悠がその役割を担った。中学時代に少しだけMBの経験はあったが、ほとんど一からのスタート。センターからの攻撃だけでなく、ライトからもレフトからも打ちまくった。中国戦では22本打って決定率72%を叩きだし、「私も長いことバレーをしていますが、これにはびっくりしました。いつも今日くらいやってほしい」と眞鍋監督を驚かせた。「新戦術で一番輝いた選手かもしれません」とも評された長岡は、個人賞で2ndベストアウトサイド賞を受賞した。

 そしてもう1人、今大会で成長を遂げたのは、主にレセプション(サーブレシーブ)を免除されて攻撃に専念していた石井優希だ。180cmのオールラウンダータイプのサイドアタッカー。2011年に全日本に初招集されたが定着せず、所属の久光製薬でも、ラリー中のオープントスなど勝負所ではロンドン五輪メンバーの新鍋理沙が処理することが多かった。

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