錦織圭、全豪前に難局。コロナ隔離後アスリートに生じるリスクとは

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「いろいろとありまして、今、僕は2週間の隔離期間になっています。このホテルの部屋で2週間という、今までに経験したことのない過ごし方をしています」

 2月8日の全豪オープン開幕を3週間後に控えた日、錦織圭は自身の公式アプリに上げた動画で、近況をそう語った。

昨年はコロナ感染、肩の負傷と不運が続いた錦織圭昨年はコロナ感染、肩の負傷と不運が続いた錦織圭 彼の言う「いろいろとありまして」が何を指すかは、この動画を見ていた人なら、おそらくはみな知っていただろう。

 錦織が乗っていたメルボルン入りのチャーター便の登場者から、コロナウィルス陽性者が発覚。錦織を含む同便の乗客は全員"濃厚接触者"とみなされ、2週間、ホテルでの完全隔離となったのだ。なお、錦織と同様の理由で完全隔離下にある選手は72名に及び、そのなかには日本のダニエル太郎も含まれている。

 全豪オープン開催地のメルボルン市があるビクトリア州は、世界でも最も厳格なコロナ対策を取っている地域のひとつだ。

 海外からの渡航者は国籍に関わらず、指定されたホテルでの2週間の隔離が義務づけられており、その間、基本的に部屋から一歩も出ることは許されない。また、国内でもエリアごとに警戒レベルが設けられており、越境条件が厳しく規定されている。

 そのような時局に鑑みて、全豪オープン主催者のテニスオーストラリアは、海外から渡航する選手や関係者用にチャーター便を手配。7都市から合計17のチャーター便が1月15日前後の3日間でオーストラリア入りし、選手を含む大会関係者1200人が入国した。

 錦織が搭乗していたのはロサンゼルス発の便。搭乗していた選手は24人。チャーター便の登場者は全員、入国の72時間前に受けた鼻咽腔PCRテストの陰性証明が求められるなど、扱いとしては他の渡航者と変わらない。

 ただ、全豪オープン参戦選手だけは、例外的に練習のため1日5時間の外出が許されている。

 とはいえ、自由に行動できるわけではない。練習パートナーは固定で、練習時間も大会側が全選手のスケジュールを組む。5時間の内訳は、往復の移動が各15分、コート練習が2時間、ジムトレーニングが1時間30分、そして食事や休憩が1時間だ。

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