錦織圭、実戦不足の代償は大きかったが収穫あり。「焦っても仕方ない」 (2ページ目)
その苦労人に、ようやくチャンスが巡ってきた。それを掴み取るべく、タイブレークではドロップショットも混ぜつつ、しゃにむにポイントを追い求めてきた。
錦織のセットポイントにフォアを叩き込んでしのいだ時は、コートサイドで見守るコーチとともに雄叫びをあげ、尋常ならざる気合いを見せる。最後は錦織のフォアがラインを逸れ、第3セットはトラバリアの手に渡った。
のちに錦織はこの試合を、「3セット、4セットで勝てたんじゃないかというのもあるので、悔やまれる」と振り返ったが、結果的にはタイブレークがターニングポイントとなっただろう。
第4セットは、錦織が現時点で持てる力を総動員して奪い返す。しかし、初戦に続きマラソンマッチを戦う代償は少なくなかった。
第4セットの途中から肩に痛みを覚え、最終セットでは明らかにファーストサーブの威力が落ちた。体力的には「大丈夫だった」と気丈に言うが、試合終盤に足が止まったのは如何ともしがたい。
劣勢に立たされたファイナルセットの、ゲームカウント1−5の相手サービスゲーム。ブレークポイントで叩き込んだ渾身のバックのリターンウイナーは、自分の力はこんなものではない、という叫びのようだった。
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試合時間、3時間53分。4−6、6−2、6−7、6−4、2−6の死闘を敗者として終えた錦織の胸中を、リモート会見のモニター越しの表情からうかがい知るのは難しい。
ただ、そのなかでも、彼の強い想いがまっすぐに伝わってきた場面がある。
今日の試合を振り返り、「今まで一番よかったはよかったですけれど」の言葉の後に続けた「まだまだ自分のいい時には、まったく達してないですが」のひと言。「まったく」と吐き出した語気の強さに、矜持と、再び「自分のいい時」を目指す決意が込められていた。
復帰後では一番いいプレーと感じながらも、「まったく達していない」といういい時との乖離の理由は、「安定感のなさ」にあると言う。その足りない要素を補うには「いっぱい試合して、いっぱいテニスして......それしかない」と明言した。
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