大坂なおみ、優勝への分岐点は3回戦。「ひどい振る舞い」から多くを学んだ (4ページ目)

  • 神 仁司●文 text by Ko Hitoshi
  • photo by AFLO

 大坂はUSオープンの毎試合入退場時に、黒人人種差別に関連する事件で亡くなった黒人の名前がプリントされたマスクをつけていた。当初の目的どおり7枚のマスクを披露して世界中の人々に"気づき"を与えることもできた。そして、一連の人種差別への抗議活動が、「私をよりいい方向へプッシュしてくれた」という優勝への原動力になったのは間違いない。

 ちなみに人種差別に関する知識は、父親のレオナルド氏から話を聞いたり、ボーイフレンドのYBNコーデー氏から本を借りたりして得ていたそうだ。

 今回のUSオープン優勝によって大坂は、アジアで男女通じて初めて3個のグランドスラムタイトルホルダーとなった。

 2度目のUSオープン優勝によって、大坂はWTAランキングを3位へジャンプアップさせ、再び世界女王の座が見えてきた。

 そして、心技体すべての面で進化した"新しい大坂なおみ"を印象づけた。世界中の視線が集まったUSオープンの表彰式は、さしずめ"ニューなおみ"の誕生セレモニーのように思えたが、本人は意に介さない。

「"ニューなおみ"になれたとか、"オールドなおみ"なのかは考えていません。自分自身が進化できると考えるだけです」

 2年前のUSオープンで初優勝し、グランドスラムタイトルを初めて獲得した時から、大坂のプロテニスプレーヤーとしての運命の車輪は、テニスの神様に見出されたかのように大きく動き始めた。

 そして、今、再びニューヨークで、大坂なおみの新たな章が始まり、女子テニス界に新しい時代をもたらす、真の女王になるための道を力強く歩み始めた。

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