日本企業のチームが全豪OPで大活躍。大坂なおみのラケットのこだわりは? (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文・撮影 text & photo by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO


 その張りの強弱を調整するのがストリンギングマシンであり、ストリングを引っ張る強度(テンション)は、ポンド、もしくはキログラムで表示される。このテンションは、40〜60ポンドあたりが玉川さんの言う「幅」。だが、今大会では「88ポンドで張ってくれ」という女子選手からのリクエストもあったという。

 さらに今大会で、玉川さんが新たに担当するようになったのが、ラケットの「バランス」のカスタマイズだ。

 選手たちは状況に応じ、フレームの先端部に重さを加えて、ヘッドスピードを上げたがる。逆にグリップ側の重量を増すことにより、スイングの安定感を求めることもある。

 フレーム部に重さを加える際は、専用の鉛テープを用いるのが慣例。同じモデルのラケットでも、選手は微妙な個体差を感じるため、「以前に使っていたものと同じになるよう調整してほしい」と頼まれることもある。

「0.3グラム、ヘッドを軽くしてほしい」

 そんなあまりに繊細な要望にも、応えていくのがプロの仕事だ。

 10歳の頃からヨネックスのラケットを使う大坂なおみは、それほど多くのカスタマイズを求めるほうではないという。それは、制作段階から大坂のリクエストやフィードバックを得て、ラケットを作り上げていることが大きいだろう。

 それでも、ストリンガールームの棚に並ぶ彼女の完成ラケットには、フレームの両サイドの内側に鉛テープが貼られており、バランス調整の跡がある。

 なお、グリップに近いフレームの内側に刻まれているのは、彼女のニックネームである「NAO-CHI」の文字と、自由の女神およびカンガルーのシルエット。ニューヨーク開催の全米オープン、そして昨年の全豪オープン優勝を示す、彼女だけのオリジナルモデルだ。

 ストリングのテンションは、53〜56ポンドが大坂の「幅」。その幅のなかで、気候や湿度、ボールなどによって、数値は微妙に変わっていく。

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