2020.01.27

日本企業のチームが全豪OPで大活躍。
大坂なおみのラケットのこだわりは?

  • 内田暁●取材・文・撮影 text & photo by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 全豪オープン会場の中心部であるロッドレーバーアリーナ内の一角に、カウンターを設けた二十畳ほどの広さの部屋がある。ここは、大会に出場する選手やそのコーチたちが必ず、一度は足を運ぶ場所だろう。

 部屋の中には20台の巨大ミシンのようなマシンが並び、その前では「YONEX STRINGING TEAM」と背に書かれたポロシャツに身を包んだスタッフたちが慣れた手つきでラケットの”面”を張っていく。13カ国から集った総勢20名の「ストリンガー」と呼ばれる彼・彼女たちは、選手の活躍を陰で支える匠の者たちだ。

大坂なおみは10歳頃からヨネックスのラケットを使っている 全豪公式ストリンガーは、5年連続で日本のスポーツ用品メーカーのヨネックスが務めている。大坂なおみも愛用するヨネックスのラケットは、今大会のシングルス本戦・男女各128の出場選手中、男子19名、女子31名が使用しており、全体のシェア率で2位につけた。

 もっとも、ストリンガーたちが対応するのは、すべての選手のあらゆるラケット。ラケットはメーカーやモデルにより、形状や材質なども異なる。フレームに縦横に張るストリング(糸)にも、大別するとシンセティック(合成樹脂)とナチュラル(動物の小腸)があり、それをどれくらいの強さで張るかは選手によって千差万別だ。

 ましてや、グランドスラムともなれば、世界中から体格もプレースタイルも大きく異なる選手が集い、それぞれが独自のこだわりを持つ。それらに対応していくには、ある程度の時間と慣れも必要だ。

「自分たちが思っていた常識というのは、実はないんだな〜と感じますね」

 今年からストリンギングチームのリーダーとなった玉川裕康さんは、しみじみと自身の言葉を噛みしめた。

「日本でラケットを張る時は、個人差の幅の予測がつくんですが、ここでは幅を遥かに超えるリクエストがあります」

 ストリングは一般的には、緩く張ると弾くようにボールを飛ばせるが、コントロールは難しくなる。逆に強く張れば制御はしやすいが、自力でボールを飛ばさなくてはならない。