平成の終わりに大坂なおみが実現した日本テニス界の「途方もない夢」 (2ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text&photo by Ko Hitoshi

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 ただ、それはもう少し先のこと、と思っていたが、その瞬間はこちらの予想をはるかに上回る早さで訪れた。

 2018年9月、USオープンで、当時WTAランキング19位の大坂は快進撃を続けて、自身初のグランドスラム決勝進出を果たした。「グランドスラムで初優勝するなら、ニューヨークに住んだ経験があり、思い出のあるUSオープンがいい」と、大坂は以前から語っていたが、その大一番となる決勝の対戦相手は、大坂の憧れの存在であるセリーナ・ウィリアムズだった。セリーナは、グランドスラム23勝を誇り、女子テニス史上最強選手とも言われている。大坂はそんなセリーナの存在を励みにテニスを続けてきたのだ。

 この時、現地アメリカメディアは、決勝はセリーナ有利という見方が多かったが、当時36歳のセリーナは2018年3月に産休から復帰してまだ半年で、ランキングは26位。そのため、大坂にも十分チャンスありと思っていた。自分がグランドスラム決勝取材を前にして冷静に考えられたのは、2014年に錦織の準優勝を取材した経験が生かされたからだ。

 結果は、大坂のすばらしい勝ちっぷりで、見事にグランドスラム初戴冠。少し戸惑いながらティファニー製のシルバーで作られた優勝トロフィーにキスをして、持つ位置を左右変えたりするなど、初々しくもあり、少しぎこちなくもあった大坂。その控えめな行動が強く印象に残った当時20歳の彼女が成し遂げた偉業は、とてつもなく大きかった。

 この優勝は、大坂のキャリアが輝く未来に向かって大きく前進する契機であり、同時に日本のテニスだけでなく、世界のテニスの歴史においても、新しい時代の到来を告げるターニングポイントとなった。

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