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錦織圭が恥ずかしがる自らの演技力。
千両役者の本領発揮で難敵を攻略 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 第1セットの終盤、さらには第2セットの序盤で相手に連続でゲームを奪われる場面もあったが、劣勢なときほど冷静なプレーで踏みとどまる。

「フリーポイントを与えず、彼のミスを誘うなど、嫌な展開になりそうなときほど、すべきことを頭に入れてプレーできた」と、試合後の錦織は落ち着き払った表情と声のトーンで振り返った。

 彼がここで言う「すべきこと」には、サーブで確実にポイントを奪うことが高い重要性を帯びて含まれる。今年の楽天ジャパン・オープン開催地であるスポーツアリーナのハードコートは、錦織曰く「けっこう速いほう」に属するようだ。風や陽光の影響を受けないインドアは、ただでさえサーブの優位性が増す。

 加えてこのコートは「スライスがすごく曲がったり、けっこう球種を変えて効果が出るサーフェス」だ。そこで今大会の錦織は、特に「ファーストを入れることと、コースを決めること」に留意しながら戦っているという。

 サーブは、ケガによる約半年の戦線離脱から復帰してきた彼が、フォームからルーティーンに至るまで、もっとも大きく変えた点でもある。「まだ試行錯誤の部分は若干ありますが、だいぶ武器になっている」と自信を深めるそのサーブを中軸とし、全体としては主導権を掌握したまま、難敵ペールを6-3、7-5で退けた。

 試合が終わった瞬間、錦織が立つコートサイドには、なだれを打ったようにファンがサインや写真を求めて押しかける。さらに、この日の試合後には、観戦に訪れていたF-1レーサーのニコ・ヒュルケンベルグとの2ショット写真の求めに応じる場面もあった。今や錦織が、テニスファンのみならず多くの人々がそのプレーを目に焼きつけ、何かしらの思い出を持ち帰りたいと願う大スターであることは、あらためて言うまでもないだろう。

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