錦織圭が残したリオ五輪の余波。日本人選手、それぞれの成長物語 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 世界の頂点をも狙うチームジャパンの同僚の言葉は、ランキングを32位まで上げ、来る全米オープンではシード選手として挑む土居にとって、自らが進む道のひとつの指標になった。

 その五輪でのチームジャパンは、もともとは錦織に加え、女子シングルスの土居と日比野菜緒、そしてダブルスの穂積絵莉の計4選手の予定であった。だが、直前で各国からの辞退者が相次いだため、杉田祐一とダニエル太郎にも、五輪開幕まで1週間の時点で声がかかる。特に杉田に到っては、カナダから日本に戻ってきた直後の通達となったため、また地球の裏側まで行かなくてはいけなかったのだ。

 それでも、昨年上旬から「オリンピック出場を目指してきた」杉田は、不思議と心の準備はできていた。すぐにリオに向かい、チームに合流し、そして初戦で勝利を手にする。それはダニエルも同様で、緊急参戦したふたりが揃って2回戦に勝ち進んだ。

 そんな杉田とダニエルの活躍により、心に重く立ちこめていたモヤを、かき消すことができた選手がいた。

 昨年まで日本人女子ナンバー1の、奈良くるみである。

 約1年前のこの時期、奈良のランキングは60位前後。「もし1年前なら、自分がオリンピックに出られていたのかもしれない......」。それはオリンピックが近づくにつれて自覚した、それまでは意識していることすら意識できていなかった悔いであった。

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