「本当は金が欲しかった」錦織圭がリオの銅に見いだす大切なこと (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「実感は沸いてきましたね。いろんな方からメッセージをもらったし、LINEは溢れ返るくらいになっていた。とても嬉しい反響でした。銅メダルではありますが、最後にメダルをかけて戦うのは滅多にできない経験ですし、有意義な時間を過ごせました。個人戦とはまた違った重みだったり、反響の大きさなどたくさんのものを感じながら、1週間オリンピックで過ごしていました」

 今回のリオ五輪は、勝ってもランキングポイントは与えられず、スケジュールも過酷を極めた。シングルスで金メダルに輝いたアンディ・マリー(イギリス)や、ダブルス金・シングルス4位となったナダルらも、9日間で競われたテニス競技のスケジュールについて、「あまりにタフ。2週間は欲しかった」と口をそろえたほどである。

 それでも、錦織の五輪出場の決意は固く、そこに関してはチームスタッフたちも、「相談の余地はなかった」という。それほどの覚悟で向かったリオの地から、理想の色ではないながらもメダルを持ち帰った感慨や安堵は、周囲が思っていた以上に大きかったのかもしれない。

 しかし、その余韻に浸る間もなく、ATPマスターズ1000の戦いはすでに始まっている。マスターズでの優勝は、錦織が今季最大の目標として掲げてきたものだ。実際、今シーズンはマスターズで2度決勝に進出し、実現可能なところまで迫っている。とはいえ、今回のシンシナティ・マスターズに関しては、「絶対に無理はできない」との迷いを抱えながらの戦いになるのは間違いない。

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