錦織圭の勝機は「スライス」にあり。初のベスト8をかけチリッチ戦へ (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 また、スライスの感覚のよさは、ネットプレーにもつながっている。スライスを相手コートに流し込むや否や、一連の流れるような動きでネットにつめ、相手にプレッシャーをかけたのである。

 そのようなプレーが顕著に表れたのが、第3セットの第11ゲーム。相手サービスゲームでのデュースの場面だった。

 全力で逆クロスに打ち込んでくるクズネツォフのフォアを、錦織は軽やかに2本、3本と続けてスライスで返していく。相手の攻め気をいなしながら、繰り返される長い打ち合い......。そうして16本目のラリーで、錦織は相手の足もとにスライスを沈めると、一気にネットへ走り込んだ。その錦織の姿に気圧(けお)されるように、ネットを叩くクズネツォワの打球。この攻防を契機に錦織は6連続ポイントを奪い、そのままフィニッシュラインまで疾走した。途中、雨による2度の中断を挟んだ試合ではあるが、終わってみれば、試合時間そのものは1時間58分。錦織自身も、「もうちょっとタフな試合になると思っていた」と意外に感じるほどの、7−5、6−3、7−5の快勝であった。

「今日の圭は、今大会で一番の集中力で試合に入っていた。ファーストサーブの確率は高かったし、それにスライスがよかった。そこが、すごく嬉しい点だ」

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