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ジョコビッチの生涯グランドスラム達成が
「A・マリー戦」である必然 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 またしても、ジョコビッチはプレッシャーに飲まれるのか......。王者の悲願達成を願うスタジアムに、切ない予感が漂い始めていた。

 しかし、「今年はパリに到着したその日から、ファンや大会との間に深い絆を感じていた」というジョコビッチは、第2セットに入ると同時に、「気持ちを切り替え、やるべきことを整理できた」。第2セットの第1ゲームでブレークポイントに面するも、「焦りはなかった」と彼は言う。

 第1セットに目立った攻め急ぎのミスを減らし、まずは足を動かした。マリーがネット際に沈めたドロップショットをも、驚異的な身のこなしですくい上げ、自らのポイントへと変えていく。徐々に攻め手を失ったマリーは、やがて自ら崩れ始めた。対するジョコビッチは、スタジアムを震わす「ノーレ(ジョコビッチの愛称)」コールを背に受け、軽やかにコートを駆ける。

 第2セットは、6-1。第3セットも、6-2。瞬く間に2セットを奪い返したジョコビッチは、第4セットもゲームカウント5-2とリードを広げ、栄光の瞬間まで、あと1ゲームへと迫った。

 このとき彼は、「込み上げてくる笑いを、抑えることができなかった」という。プレッシャーはなかった。だが、フッと差し込む心の隙に、「レッツ・ゴー!」と声を上げ自らを鼓舞するマリーの執念が押し寄せる。11歳から知る好敵手に、土壇場で2つのゲームを奪い取られた。

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