2016.06.09

全仏初優勝。正しかった、
新女王ガルビネ・ムグルサの「選択」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 栄光の瞬間の到来に気づくには、数秒の時間を要した――。マッチポイントで、セリーナ・ウィリアムズ(アメリカ/第1シード)の強打を打ち返した、柔らかいロブ。その行方は、ボールを追うセリーナの背に隠れ、ガルビネ・ムグルサ(スペイン/第4シード)から見ることはできなかった。自分の頭上を緩やかに越えていくボールが、ラインのわずか内側に落ちたことを……つまりは試合が終わったことを悟ると、セリーナは静かに拍手を送った。

全仏を制してグランドスラム初優勝を遂げたガルビネ・ムグルサ しばし間を置き、ようやくコート・フィリップ・シャトリエに響く、主審の「ゲームセット」の声。その瞬間、客席から一斉に上り立つ大歓声を耳にしたことで、彼女はようやく、自分が成し遂げたことの大きさを悟ったのだろう。ムグルサは驚きに目を見開くと、クルリと身をひるがえしてファミリーボックスを向き、そのまま、ゆっくりと背中からコートに倒れ込んだ。

 3歳からテニスを始め、17歳でプロに転向したムグルサのキャリアは、”選択”の連続であった。

 スペイン人の父とベネズエラ人の母を持つ彼女は、ベネズエラで生を受ける。10歳年の離れたふたりの兄もテニスに打ち込んでいたため、彼女がテニスに興味を持つのは自然の流れだった。