天然ではない。「まったく覚えてない」錦織圭の思考回路 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 あれから2年の歳月を経て、場所をロンドンからパリに移し実現した今回の再戦は、またしても日をまたぐ展開となる。第1セットは、錦織が、「攻撃的で、ボールを左右に打ち分けられた」と自画自賛のプレーで圧倒。しかし、第2セットに入ると、実力者のボレッリが得意のフォアで反撃に出る。さらには、パラパラと落ち始めた雨が時おり思い出したように威力を増し、その度に落ち着きを失う客席からは、一斉に「バッ」と音を立て傘の花が咲き乱れた。

「あんな雨のなかで試合をやったことは、思い出せない。ボールは重くなるし、目に雨は入るし......」

 集中力の維持、変化する環境、そして調子を上げてきた相手のプレー。

 さまざまな適応が求められるなか、試合は第2セットの4−4で一度中断。約2時間40分後に再開されるも、錦織が第2セットを取り、第3セット2−1となった場面で、ふたたび試合は中断へ。そのまま再開の目処は立たぬまま、結局、残りは翌日に繰り越されることとなる。

「どちらかというと、2セットダウンしている相手のほうが頭をリセットできるだろうし、中断は嬉しいだろうな」

 そんなことも感じながら、彼は、雨にぬかるむセンターコートを後にした。

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