フェデラーにとって、錦織圭との対決は特別な意味を持っている (2ページ目)

  • 山口奈緒美●文 text by Yamaguchi Naomi
  • photo by Getty Images

 ところが昨年(2014年)、フェデラーはそうした周囲の憶測や心配をかき消す活躍を披露。ツアー5勝、ウインブルドン決勝進出、そして年間1位の座を、現王者のノバク・ジョコビッチ(27歳。セルビア/世界ランキング1位)と最後まで争った。さらに、デビスカップ(男子国別対抗戦)初優勝をスイスにもたらした。

 今年は、王座奪還も夢ではない――人々がそんな期待を抱く中、シーズン開幕早々に大きな節目に到達した。ツアー通算1000勝。それを、ツアー開幕戦のブリスベン国際(オーストラリア)決勝という舞台で飾るところが、またフェデラーらしい。

 勝った相手は、準決勝で錦織を破ったミロシュ・ラオニッチ(24歳・カナダ/世界ランキング8位)。ツアー屈指のビッグサーバーを上回る、サービスエースを決めての勝利だった。

「これまで、どんな記録的な数字も、僕にとっては意味のないことだったんだ。でも『1000(勝)』は、特別な感じがする。単に1から1000まで数えるだけでも、結構な時間がかかるよね」

 フェデラーが、自身にとってのシーズン第1戦を制したのは4年ぶり。世代交代の行方が注目される2015年だが、そんな議論をやんわりと退けるようなスタートだった。

 準決勝では、やはり若手期待のグリゴール・ディミトロフ(23歳・ブルガリア/世界ランキング11位)を1時間足らずで一蹴している。"ベイビー・フェデラー"の異名を持つディミトロフには、これで3戦全勝。決勝で下したラオニッチにも8勝1敗と大きく勝ち越している。

 若手に対するフェデラーのコメントは時に厳しく、昨年も「若いと言っても、彼らはもう長い間ツアーで戦っているじゃないか。(上に)上がってくるのが遅いと思う。僕やラファ(ラファエル・ナダル=28歳。スペイン/世界ランキング3位)やノバク、アンディ(アンディ・マレー=27歳。スコットランド/世界ランキング6位)があれくらいの年齢のときと比べると、そのレベルに届いていない」と話したことがある。

 期待するがゆえ、奮起をうながす思いもあるのだろうが、次世代を担う若手にとって、フェデラーの壁はまだまだ厚い。

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