2013.05.25

全仏オープン開幕。錦織圭は「赤い土」を制することができるか

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

クレーコートでフェデラーから金星を挙げた錦織圭。全仏オープンでその成長が試される 全仏オープンをテレビ中継などで見たとき、コートの鮮やかな赤色に目を奪われた人も多いのではないだろうか。五月晴れの紺碧(こんぺき)の空と、その下に褐色が広がる豊かな色彩は、どこかフランスの三色旗を彷彿とさせる。5月26日、フランス・パリ――。ついに、錦織圭の『全仏オープン2013』が幕を開ける。

「レッドクレー」とも呼ばれる赤色の正体は、『アンツーカー』という名を持つ人工の土だ。焼いた粘土を粉砕して作られたもので、フランス語の「アン・トゥ・カ(どのような状況でも)」が語源と言われている。

 だが、「どんな状況でも=万能」を意味するその名とは裏腹に、アンツーカーを用いたクレーコートは、スペイン勢など一部の「スペシャリスト」が幅を利かせるサーフェスだ。理由は、このコートの特異性にある。土のため足もとは滑りやすく、ボールは高く跳ねる。おまけに表面の起伏は刻一刻と変化するため、イレギュラーが多い。さらには欧州の一部地域をのぞき、クレーコートは比較的、数が少ないという現状もある。他のコートでは圧倒的な強さを示しながら、全仏だけは苦手とした名選手が古今東西多く存在するのも、そのようなクレーコートの特質のためだ。

 前置きが長くなったが、錦織圭はかつて、このクレーコートを「最も好きなサーフェス」だと公言していた。優勝したいグランドスラムとして、真っ先に全仏オープンの名を挙げたこともある。そのような錦織の赤土への憧憬(しょうけい)の源泉を探ったとき、そこにあったのは、クレーコートで勝利を重ねた幼少期の思い出である。

 13歳のとき、錦織は欧州で行なわれた複数のジュニア大会に出場し、クレーを得意とする地元の年長者たちを次々と撃破した。まだ彼が、ニック・ボロテリー・テニスアカデミーに留学する前のことである。「海外の選手相手にも戦っていける」との自信を手にしたこの欧州遠征は、世界の頂点を視野に入れて戦う彼の、今に連なる原点なのだろう。