【テニス】クルム伊達公子の心境の変化。「50歳でもプレイしているかも」 (2ページ目)

  • 神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi
  • photo by Ko Hitoshi


 結局、試合当日に吹き荒れた強風に順応できなかったこともあり、ミスを43本も出してしまい、3-6、2-6で敗れたクルム伊達だったが、落ち込む様子はなく現在のツアーの中での立ち位置を冷静に語った。

「今の位置では、WTAツアーでは予選からの出場になる。予選は、勝ち上がっても獲得できるポイントが少ないし、私の体力ではパフォーマンス的に厳しい。しばらくは、ランキングを上げることを考えていかないといけない」

 しかし、2011年シーズンに、人生初のスランプを経験したことが役立っているという。

「昨年勝ち星に恵まれない時に、ITFに出場した経験から、(今の私には)スランプに陥る前に、自分のテニスを見失わないようにする必要があると感じた。勝つだけじゃなくて、試合数をこなすことも自信につながるし、自分のテニスを見失わないことにもつながる。もちろんWTAの方がレベルは高いが、今年はスケジュールを見ながら、積極的にITFをやっていく方向になるかな」

 さらに、最重要視してきたグランドスラムへの思いにも変化が現れている。

「2011年はグランドスラムで勝ち星を挙げることを目標にしていたが、思うようにいくものではないので、(今年の)グランドスラムは"おまけ"と思って挑もうかなと。今日は負けたけど、"おまけ"がついてこなかった、と。それぐらいでちょうどいいんじゃないかって」

 1年前、クルム伊達が「当然負けて楽しくはないですよね。1回戦で負けたくないし、勝ちたい気持ちが大きくなる」と言っていたことと比べると明らかな心境の変化だ。

「かといって、グランドスラムへの思いが半減したわけではありませんけどね」と付け加えたクルム伊達だったが、41歳で迎えた今シーズンは再チャレンジを始めた頃の「テニスを楽しむ」という気持ちがプレイに表れていて、さらなる原点回帰をしているようにも映る。

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