ラグビー帝京大、大逆転劇はなぜ起こったのか。主将投入での「プラン変更」や抜群の修正力を見せた (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by 井田新輔

 対する京産大のスクラムは伝統として、組む際、帝京大など多くのチームとは違い、右プロップ(3番)の左腕がフッカーの右腕の上でパックする変則タイプ。これに対抗するためには、よりフロントローが結束して、右プロップがしっかりと組み込んで前に出ることがカギとなる。

 もちろん、帝京大はその京産大スタイルを分析済みだった。細木の交代直後のスクラム。ヒットして主将が前に出る。相手を押し崩す格好となり、いきなりコラプシング(故意に崩す行為)の反則を奪った。

 スクラムを選択し、またガチッと組み込む。組み直し。立て続けにコラプシングの反則を奪う。またまたスクラムを選択。右の細木サイドが前に出たところで、SH(スクラムハーフ)の李錦寿が右サイドに持ち出して、左中間に飛び込んだ。これはもう、スクラムがもたらしたトライだった。

 ゴールも決まり、3点差に追い上げた。もうイケイケだった。細木が入ったことで、SO(スタンドオフ)の高本幹也は戦い方を少し、変えた。こう、打ち明ける。

「スクラムを中心に相手を崩していこうとプランを変えました」

 その後もスクラムとなれば、押して反則をもらった。後半32分。同点PG(ペナルティーゴール)が決まる。その後、相手のシンビン(10分間の一時的退場)をもらい、ラスト2分、WTB(ウイング)ミティエリ・ツイナカウヴァドラが右隅に飛び込んだ。

 苦しんで、苦しんでの勝利。泥臭い猛練習に裏打ちされた京産大の気概もあっただろうが、帝京大は2トライを先取したことで、どこかに気の緩みが出たのかもしれない。前半は、"らしく"ない展開だった。

 だが、後半、帝京大は原点に戻った。ひるまず、たゆまず、迷いなく。1年間積み上げてきたフィジカル、コンタクト力、フィットネスには自信がある。そこで真っ向勝負。タックル、タックル、またタックル。加えて、ラグビーナレッジ(理解力)も高い。

 いわば修正能力だ。ディフェンスの際の立ち位置を微妙に変えるオフサイドケアなど、規律にも細心の注意を払うようにした。前半9つ(相手は6つ)犯した反則が後半はゼロ(相手13)だった。

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