ラグビー帝京大、大逆転劇はなぜ起こったのか。主将投入での「プラン変更」や抜群の修正力を見せた (3ページ目)
岩出雅之監督は、「昭和的ですけど」と苦笑いを浮かべた。「後半は、学生に魂が入ったんじゃないかと思います」
かつて大学選手権9連覇を遂げた常勝軍団も、ここ3年間、大学日本一から遠ざかっている。うちベスト4が2回ながらも、新聞には<低迷>という文字が躍った。
記者会見。岩出監督はメディアを見ながら少し笑う。
「決勝に出られなくて、低迷とか言われて。ま、そう言うのは、みなさんのほうなので」
スポーツ紙の記者から、「9連覇のチームと比べて?」と聞かれると、岩出監督はぼそっと漏らした。
「そう、比べなくてもいいのかな、と」
もちろん、学生チームは毎年、新たな布陣で大学日本一を目指して日々、努力している。監督の口癖が『本気・根気・元気』。会見ではこう、言った。学生への信頼感がにじむ。
「後半は、根気強く、前半の分を取り戻すプレーをやってくれたんじゃないでしょうか。何とか勝たせていただいて、学生たちがもう一歩、タフになったんじゃないかと思います」
さあ決勝だ。相手は、4季前と同じく明大となった。先の対抗戦の対戦では14-7で勝った。ただ、後半は防戦一方だった。
意気込みを聞かれると、細木主将はこう、言葉に力を込めた。
「明治大学さんだからといって、僕らが変わることはなくて、帝京大学としてのプライドを持って、1年間積み上げてきたものをゲームにすべて出すだけです」
ひな壇の隣に座る岩出監督はこうだ。
「そのとおりです」
記者からどっと笑いが起きた。63歳の名将はこう、続けた。
「プレーの芯の部分をしっかりするのが大事だと思います。学生たちにはまだまだ未来があるので、自分たちの成長を実感できるようなゲームにしたいなと思います」
そういえば、帝京大OBの日本代表SH、流大がこう、ツイートしている。
<このクロスゲームを経験した帝京はまた一段と強くなったと思う!京産のプレーは本当に感動しました>
同感である。あとひとつ。細木のキャプテンシーを軸とした最上級生の結束力が、帝京大を4季ぶりの大学日本一に押し上げていく。
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