ラグビー日本代表戦で「あ・うん」の逆転トライを演出。新戦力のSH齋藤直人が魅せた (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 齋藤の述懐。

「亮土さんがこう、外側から、自分の気配を消す感じて入ってきているのがわかっていた。たしか(相手のヘル)ウヴェさんが内側にいたんですけど、そのウヴェさんと目が合ったので、これは切れる(パスで外せる)なと思って、亮土さんに投げました」

 そのまま、中村がスペースを突いて、鋭利するどいランでポスト右にトライした。逆転トライ。中村が笑い飛ばした。

「フォワードがいいプレッシャーをかけてくれていて、いいところに(齋藤)直人が放ってくれたので、"ごっつぁん"みたいな感じで(トライを)とれました」

 試合は、32-17で新生日本代表が初陣を飾った。齋藤の持ち味は、そのラグビーに対する真摯さにある。目標設定と研究心、そのための不断の努力の積み重ねである。「目標はワールドカップ」と何度も聞いたことがある。

 こんなことがあった。2019年2月、早大3年の齋藤はW杯トレーニングスコッドキャンプのメンバーから外れた時、そのスコッド練習にひとりで見学に来ていた。日本代表になりたい、少しでも上手になりたい、といった向上心ゆえだった。

 その後、W杯メンバーに届かなかった時、齋藤は「悔しさが込み上げてきました」と漏らした。日本を熱狂させたW杯を観戦し、さらに代表入りへの思いを募らせたのだった。早大4年の時は主将で大学日本一に輝いた。直後、この日対戦したサンウルブズのメンバーとしてスーパーラグビーに参戦したものの、スーパーラグビーは新型コロナ禍の影響で中断。

 昨年春、サントリーサンゴリアスに入り、2019年W杯で活躍したSH流大を追いかけてきた。身長165cm、体重73kg。サントリーでは、ニュージーランド代表の至宝、SO(スタンドオフ)ボーデン・バレットとともプレーした。感じたことは?

「きつい状況でも、常にラグビーを楽しんでいるなという印象を受けました」

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