オールブラックスが有終の美。ラグビー王国の誇りと情熱をみせた (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 前半5分。NZが相手のキックを自陣で捕って、逆襲に転じた。中盤でラックを連取し、左オープンに振る。SO(スタンドオフ)リッチー・モウンガからNo.8(ナンバーエイト)のリードがもらってタテを突き、LO(ロック)のブロディ―・レタリックにつなぐと、タックルを受けながら右手のフリップパスで、内側に走り込んできたPR(プロップ)のジョー・ムーディーにオフロードパスを通した。PRだ。PRのムーディーが右中間に躍り込んだ。

 まったくオールブラックスはFW前5人(PR、HO=フッカー、LO)もよく走る。ハンドリングもうまい。もちろんBK(バックス)も自在に走り、FB(フルバック)のボーデン・バレット、33歳のWTB(ウイング)ベン・スミスがトライを重ねた。特に前半終了間際のスミスのトライで勝敗の趨勢は決まった。前半を28−10で折り返した。

 それにしても、なぜベテランのベン・スミスが準決勝に出場しなかったのか、不思議でならない。大舞台では彼が持つような経験がより生きるはずなのに。

 ディフェンスとて、この日のNZは厳しいタックルを連発した。タックル成功率は相手の75%に対し、223本中の199本成功の89%を記録した。とくに両チームトップの21本を決めたのがリード主将だった。

 リード主将も、この日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチのレタリックもブレイクダウンなどで地味な仕事もし続けた。ハンセンHCは試合後の記者会見で言った。

「自分たちのジャージを誇りに思えるプレーができた。誇りを持って、ニュージーランドに帰ることができる」

 115年以上の歴史を持ち、テストマッチ勝率が8割近い数字を残してきたオールブラックス。RWCでも最多の3度、優勝している。歴史でいえば、強さも人気も世界ナンバーワンのチームだ。だからこそ、その黒いジャージに袖を通した選手の重圧は計り知れないものがあるのだろう。3位でも、さほどファンに喜ばれることもなかろう。

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