闘将VS闘将。ウェールズ対ジョージアでラグビーの「神髄」を見た (2ページ目)

  • 齋藤龍太郎●取材・文・撮影
  • text & photo by Ryutaro Saito

 LOとして世界最多の129キャップを誇り、今回4度目のワールドカップ出場を果たしたアラン・ウィン・ジョーンズ。196センチ118キロの巨体で、最前線で常に体を張り続ける献身的なプレーから、「闘将」と表現されることも多い。激しいタックルを見舞った直後、すぐに次のポイントへ移り接点でボールの争奪に絡む。スタッツにこそ表れてはいないものの、ジョージア戦でもこうした持ち味を80分間発揮し続けた。34歳という年齢を感じさせないハードワーカーである。

 なお、このジョージア戦ではラインアウトで5回のキャッチに成功と、チームで一番の数値をマーク。前半12分のウェールズのFLジャスティン・ティピュリックのトライもキャプテンのラインアウトキャッチを起点とするものだった。

 2015年の前回ワールドカップではジョージアのキャプテンを務めていたLO/FLマムカ・ゴルゴゼも「闘将」の異名にふさわしいスキッパーだった。195センチ118キロというアラン・ウィン・ジョーンズとほぼ同じサイズの巨漢は、2017年には代表からの引退を表明。しかし、今大会直前に負傷者が相次いだことで翻意した。じつに2年半ぶりに今回のテストマッチ、それと自身4度目となるワールドカップの舞台へと返り咲いた。

 35歳となった現在も、フランスリーグのTOP14で戦い続けてきたこともあり、その運動量と激しさはブランクを感じさせないものだったと言えよう。このウェールズ戦のタックル成功数はチーム2位タイの11回と、自軍の防戦に身を投げ打ってディフェンスし続けた。

 闘将。献身。長年の経験。4度目のワールドカップといった共通項を持ち、それぞれのチームのスタイルを体現する両雄はしばしば接点でぶつかり、フィジカルバトルを繰り広げた。ラグビーは個と個の勝負ではなく、チームスポーツだ。しかし、そのマッチアップはウェールズ対ジョージアの体の張り合いやプライドのぶつかり合い、すなわちラグビーの魅力そのものを象徴するもので、「体を張るとはこういうことだ」というメッセージが伝わってくるようなプレーであった。

 勝ち点5を獲得したウェールズが目指すのは、まずはプールDのトップ通過だ。そのためにも6日後の9月29日(日)に控えたオーストラリア戦は極めて特別な一戦となる。

「よかったが、まだまだ取り組まなければいけないことがある」

 アラン・ウィン・ジョーンズは、ジョージア戦の勝利に特別な喜びを示すことなく、すでに次を見据えていた。ジョージアも同じく9月29日(日)に、ウルグアイと対戦する。

 闘将たちが身をていし続ける長い旅は、まだ始まったばかりだ。

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