「ダン・カーター劇場」で昨年王者を撃破。主役はコメントも格好いい (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

「16年もプロを経験していて緊張するのかと思うかもしれませんが、4ヵ月ぶりの試合だったこともあって緊張しました。最初のキックはプレッシャーを感じた。今まで数千回、キックを成功していますし、このキックが入れば自信がつくと思いましたが、思うとおりにはいかなかった」

 ただ、さすがレジェンドである。カーターはその直後、世界中のラグビーファンを魅了してきたプレーを披露する。8分には得意の左足でPG(ペナルティゴール)を決め、さらに15-3とで迎えた前半22分には右タッチライン際を抜け出したWTB(ウイング)山下楽平をしっかりとフォローし、インゴール右中間に飛び込むトライをサポートした。

「通常、自信がつくまでは数試合かかりますが、今日スキルを出せたことに自分でも少し驚いています。ただ、それができたのは、今までやってきたハードワークと自分の経験が生かされたのではないかと。また、チームメイトも私がやりやすいような状況を作り出してくれた。自分の仕事ができたことがうれしい」

 ゲームキャプテンを務めた神戸製鋼のFL橋本大輝も、レジェンドのプレーに驚きを隠せない。

「カーターがいいゲーム運びをしてくれたので、いい流れを作ってくれた。(カーターとの)初めての試合は不安だったが、試合開始後、5分、10分すると、すぐにその不安はなくなった。オールブラックスは伊達じゃないなと思いました(笑)」

 このトライの後、カーターはすっかり落ち着きを見せて、パス、キック、ランと安定感あるプレーでゲームをコントロールしていく。周りの選手も彼のプレーに引っ張られるように、いいプレーを見せるようになっていった。この日はサントリーから移籍した元日本代表SH(スクラムハーフ)日和佐篤(ひわさ・あつし)も先発しており、ハーフ団が安定しているとチームのパフォーマンスは上がっていくものだ。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る