【ラグビー】サントリーを2冠に導いたエディー・ジョーンズは、
日本代表に何をもたらすのか? (2ページ目)
まるでオーケストラが軽快なワルツを奏でるがごとく、それぞれが自分の役割を果たした。主将の竹本隼太郎が胸を張る。
「52週目のラストの20分に継続と精度を発揮できた。タフさのレベルが上がったことを証明できました」
このトライ(ゴール)で12点差とし、勝負の帰趨は決まったのである。
勝利を確信した瞬間は?と聞かれ、エディーは笑いながら漏らした。
「試合前のウォーミングアップの時。選手の態度やエネルギーが素晴らしくて」
つまりは、よき準備ができたということだろう。日本選手権のヤマ場は準決勝の東芝戦だった。ここで今シーズン唯一負けているチームに勝った。人間だもの、どうしても安堵感が芽生えてしまう。
水曜日、エディーは集中力のないFW練習に怒った。「もう終わり」と途中で打ち切った。木曜日は練習量を落とした。金曜日。エディーは練習に顔を出さなかった。選手は体のリカバリーに専念した。
この1週間。クラブハウスのあちこちに紙が貼られた。<52ウィーク><最後ベスト80分間>と書かれていた。
1年間の過酷な練習を思い出せ。自信を持って、最後の決勝を戦おうという檄である。
エディーはつぶやく。
「今週は52週間でもっとも軽いボリュームの一週間でした。でもチームはリフレッシュしてくれた。最後の20分間に示したエネルギーは素晴らしかったと思います」
これでエディーはサントリーを離れ、日本代表のヘッドコーチに就任する。豪州のクラブチーム、南アフリカ代表、そしてサントリー。指導したチームをことごとくトップに引き上げてきた。オーストラリア生まれで、母と妻が日本人。
どうしたって"エディー・ジャパン"に期待したくなる。ターゲットは勝つことのみ。日本の強みをどう明確にし、弱点を克服していくのか。理想に掲げるアタッキング・ラグビーをどういったスタイルで日本代表に落とし込んでいくのか。チームカラー、あるいはカルチャーをどう根付かせていくのか。
ついでにいえば、ラグビー人気もなんとかしてほしい。雨天とはいえ、この日のスタンドはわずか1万人だった。あまりに寂しい。
「日本代表が優勝できるようにがんばりたい。この国立を6万観衆で埋めたい。そのためには、いいラグビーをやるしかない。お客さんはジャパンがいいプレイをし、勝つのを見たがるでしょう」
わかった。エディーの持つ「何か」を信じよう。何かとは、信念と情熱だろう。まずは生みの苦しみだ。代表選手にはハードトレーニングが待っている。
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