早田ひなの快進撃に卓球王国・中国も要警戒。パリ五輪では日本に欠かせないピースとなる理由 (2ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • Photo by Itaru Chiba/AFLO

【代表に欠かせない「パワー」と「左」】

 さらに、張本智和と組んだ混合ダブルスでも「早田だからこそできる戦術」が多々見られた。

 まず卓球の混合ダブルスにおいて、女子は前陣、男子は後陣でプレーするというのがセオリーとしてある。女子はあまりパワーがないぶん、打点が早く、ピッチも速いスピードを駆使した卓球が主流。逆に男子は、パワーのあるドライブを武器に中陣〜後陣でプレーする選手が多いからだ。東京五輪の同種目で金メダルを獲得した伊藤と水谷隼ペアのスタイルがいい例だろう。

 だが早田の場合、身長の高さとリーチの長さを生かし、卓球台から後ろに下がった状態でも十分にプレーができる。それゆえ、張本が前で揺さぶり、返ってきたところを早田が後ろから叩き込む、という珍しいパターンで得点するシーンが多く見られた。早田が「後陣からでも強いドライブを打てる選手」だからこそ可能な構図だろう。

 加えて早田が「左」であることも、日本代表の現状からすれば大きい。

 水谷が東京五輪を最後に引退を表明し、伊藤との最強タッグも解散。2024年のパリ五輪で混合ダブルス連覇を狙う日本として、次はエース張本とのペアが有力視される。彼が「右」のため、ダブルスで相性のいい左利きの選手と組み合わせるのは間違いない。そこで適任なのが、2年前にもペアを組んだ経験のある早田というわけだ。

 2人は2019年11月に、ワールドツアー・オーストリアOPで中国の林高遠(リン・ガオイェン)・朱雨玲(シュ・ウレイ)ペアを破って優勝。同年6月のLION卓球ジャパンOP荻村杯でも、優勝こそ逃したが、準決勝で中国の樊振東(ファン・ジェンドン)・丁寧(テイネイ)ペアに勝利した実績がある。

 まだペア歴は浅いが、今回の世界卓球で相性のよさとその実力を見せつけた。張本も「早田選手を信じればきっと勝てると思って、早田選手を信じられた」とコメント。伊藤とのコンビも含めて、ダブルスにおける"左の強打者"として早田は欠かせないピースになってくるだろう。

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