平野早矢香が振り返る卓球界初のメダル。試合前日の夜に「無理です」と答えたまさかの変更 (4ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi

――相手を混乱させることに成功させたわけですね。試合も圧巻のストレート勝ちでした。

「第2ゲームだけ競ったんですけど、そこも最終的にポイントをしっかり取ることができたので、最後の第3ゲームはずっと流れが私たちにある状態でした。シンガポール対策として強化はしてこなかったものの、石川選手とはそれまで何度もダブルスを組んだことはありましたし、性格やプレースタイルもよくわかっていましたから、突然のペア変更でもやりやすかったですね」

――その試合を勝ち、卓球では日本初の五輪でのメダル獲得となりましたが、その瞬間はどんな気持ちでしたか?

「嬉しいというよりも、正直ホッとした気持ちが強かったですね。3人ともロンドン大会の団体戦にかける思いはすごく強かったんですが、中国が第1シードを取ると仮定すると、メダルを獲るためには決勝戦まで当たらない第2シードを獲得することが必須になります。それは私たちにとって大きなミッションだったんです。

 そのために、各々が世界ランキングを上げていかないといけなかった。だから五輪での試合よりも、それまで何年もかけて準備してきた"過程"が大変だった記憶があります。私個人としても、ロンドン五輪では27歳だったので、年齢と経験のバランスがすごく取れていた時期でしたが、『今回を逃したら一生、五輪でメダルは獲れないんじゃないか』と思っていました。そういう気持ちと覚悟で臨んでいましたから、嬉しいよりも『よかった』と、ホッとする気持ちのほうが大きかったんだと思います」

(後編:東京五輪の団体戦で金メダルなるか)

■平野早矢香(ひらの・さやか)
1985年3月24日生まれ。栃木県出身。全日本選手権のシングルスを2007年度から3連覇するなど、通算5度の優勝を達成。2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪に出場し、ロンドン五輪の団体戦で日本卓球史上初の銀メダル獲得に貢献した。2016年4月に現役を引退後は、後輩の指導をはじめ、講習会や解説など卓球の普及活動にも取り組んでいる。

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