2020.01.04

「大魔王」伊藤美誠のプレーは予測不能。
中国も恐れる独創的な進化

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • photo by Kyodo News

東京オリンピックで輝け!
最注目のヒーロー&ヒロイン
卓球 伊藤美誠 編

 東京五輪の女子シングルス代表を確定させている伊藤美誠は、"卓球王国"中国からも恐れられ、「大魔王」と呼ばれるようになった。昨年12月時点での世界ランキングは自身最高の4位で、トップ3を独占する中国勢を捉えようとしている。

中国のトップ選手相手に勝利が増えてきた伊藤 2018年シーズンから、日本人選手の中では「頭ひとつ抜きん出た存在」であったことは間違いない。しかし、2019年に入っても進化は止まらなかった。1月の全日本選手権では、シングルス、ダブルス、混合ダブルスでいずれも優勝し、2年連続での3冠を達成。日本卓球女子初の快挙を成し遂げ、さらに強さが増した印象を残した。

 国際大会では、5月の中国OP準々決勝で、当時の世界ランキング1位の丁寧(テイネイ/中国)を相手に大金星を挙げて3位。続く香港OP(6月)で準優勝、オーストラリアOP(7月)、ブリガリアOP(8月)では両大会とも3位と、安定した成績を残し続けた。

 さらに、10月開催のスウェーデンOPとドイツOPではいずれも準優勝。スウェーデンOPでは、決勝で現在の世界ランク1位・陳夢(チェンムン/中国)にフルゲームで競り負けたものの、準々決勝で中国の次期エース候補である同6位の王曼昱(ワンマンユ)、準決勝でも同2位の孫穎莎(スンインシャ/中国)を破った。ドイツOPでも、2018年世界ジュニア女子シングルス王者の銭天一(チェンティエンイ/中国)を倒すなど、"中国人キラー"ぶりを見せつけた。

 強さの要因は、ラケットを自在に操ることで生み出される「予測不能なプレー」と、さまざまな技術を大舞台で試しながら自分のものにしていく「強靭なメンタル」が挙げられる。

 今や伊藤の代名詞にもなっている、コンパクトなテイクバックから放たれる一撃必殺のカウンター"みまパンチ"や、バック面の回転のかかりにくい表ソフトラバーによるナックルボール。加えて、通常のチキータと同じ構えから逆回転をかけて飛ばす"逆チキータ"に、回転や長さのバリエーションが豊富なサーブなど、挙げるだけでもキリがないほどテクニックとコンビネーションは多彩だ。

 あまりの技の多さと独創的なプレースタイルから、中国でさえも攻略の糸口を見出すために「仮想・伊藤美誠」に見立てた選手を複数人用意して対策を練っている。その中国の徹底ぶりからも、伊藤が攻撃の引き出しを増やすほど、卓球王国の壁を打ち崩す可能性は高まると言えるだろう。