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【高校バスケ】名門・桜花学園、亡き名将に捧ぐインターハイ制覇「最後は井上先生が空から見守ってくれた」 (2ページ目)

  • 三上 太●取材・文 text by Mikami Futoshi
  • 加藤誠夫●写真 photo by Kato Yoshio

【井上氏が初の全国制覇を果たした地で】

亡き名将に捧げたインハイ制覇は桜花学園の新たな歴史の始まりでもある photo by Kato Yoshio亡き名将に捧げたインハイ制覇は桜花学園の新たな歴史の始まりでもある photo by Kato Yoshio

 どんな状況であっても「全国制覇」、「日本一」という目標をぶらさずに戦うことが桜花学園だ、と白コーチは言う。自身もその覚悟を持って、茨の道ともいうべき名将の後を引き継いだ白コーチが、インターハイを通した選手たちの成長について、こう言及している。

「ここ数年の桜花学園は、競った試合や、勝負どころで相手に流れを持っていかれる展開でずっと苦しめられていました。それを打破できたきっかけは、6月の東海ブロック大会の決勝戦だったと思います。そこで最後の最後まで粘って、粘ってディフェンスで頑張れば、うちも勝てるんだと、選手たちも自信になったようです(岐阜女子戦で2点ビハインドからブザービーターの3ポイントシュートで逆転勝ち)。

 インターハイを通しても、3回戦の大阪薫英女学院(大阪)戦や準決勝の精華女子(福岡)戦、決勝の日本航空北海道(北海道)戦でも苦しい展開になったときに大崩れすることなく、むしろ苦しいときこそディフェンスだという認識をチーム全員で持てたところがありました。しかも、それを選手たち自身が声かけをして、みんなで『そうだね、そうだね』という意思疎通ができたところが大きな勝因じゃないかと思います」

 選手たちの成長だけではない。前編の冒頭に記したように、白コーチとしてはどうしても今年度のインターハイで優勝したい、強い思いがあった。その思いこそが、選手たちの成長と、桜花学園の4年ぶり26回目のインターハイ制覇をさらに後押しした。前記のとおり、桜花学園が全国大会で初優勝を果たしたのは1986年のインターハイだが、実はそれが今年度と同じ岡山県開催だったのである。

「井上先生も生前、今年の 岡山インターハイをすごく楽しみにしていて、ずっと『俺が初優勝をしたのは岡山なんだ』と、私たちコーチの隣で話されていたんです。そして『また勝とうな』とずっと言っていたので、先生と一緒に達成することはできなかったんですけど、この岡山インターハイは私のなかで絶対に、何としても譲れないという思いもありました。先生とお別れをしてから初めてのインターハイで桜花学園の存在感を見せつけたいという思いもありましたが、最後は先生が空からチームを見守ってくれて、苦しい時間帯も力を貸してくれたんじゃないかと思います」

 続く苦難の先に、名将へ捧げる通算72回目の全国制覇――。

 しかし、だからこそ、次の挑戦が始まる。高校バスケットの真の日本一を決める大会とも呼ばれる12月のウインターカップは、追いかけられる立場となって、全国の強豪たちと対峙する。井上・前コーチが率いていたときの桜花学園は、ことごとくそれを跳ね返してきたが、新生・桜花学園はどうか。2025年のインターハイ優勝は彼女たちにとって、新たな"はじまり"にすぎない。

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