男子バスケ16歳の超大物・白谷柱誠ジャックの現在地とNBAに向かうために必要なものとは? (2ページ目)
【「第2の八村塁」と呼ぶには早いが、潜在能力はピカイチ】
このことは昨シーズン、メンフィス・グリズリーズとの2ウェイ契約を結び、日本史上4人目のNBAデビューを飾った河村勇輝が証明したといっていい。彼は身長172cmと到底、体格に恵まれているとは言えないにもかかわらず、高校、Bリーグ時代から見せていた人一倍の向上心と妥協を許さない信念、コーチやチームメートらと積極的にコミュニケーションを取る姿勢などで身体的不利をカバーし、世界最高峰の舞台に立つことを実現させた。
ホーバスHCは白谷という人間の印象として「すごく優しい」と述べた。もちろん、一般生活において優しいことに悪いことなどない。が、最高峰のレベルでバスケットボールの選手として競争を勝ち抜き、名を馳せていくにはがむしゃらなまでの闘争心を要するだろう。
「年下というのもあるので遠慮している部分もあるんですけど、自分が年下だからこそできること、一番に走ったりエナジーを出したりっていうのを心がけてはいます。
優しすぎるとは言われるんですけど、その分、試合中はもっとアグレッシブになって相手を潰そうという気持ちで、マインドセットを変えてやっているので、そこに関してはどんどん気持ちを強くしていきたいというのもありますし、オン・オフの変え方に気をつけていけたらなと思っています」
ホーバスHCが「優しい」と評していたことを踏まえて、自身の競技における精神面について問われた白谷はこのように話した。柔和な表情の彼から「潰そう」という刺激的な言葉が出てきたのはいいことだ。
四日市メリノール学院中学の山﨑修コーチは、「卒部式」で彼くらいの素材の選手はアメリカには「ざらにいる」という厳しい言葉で、白谷を送り出した。白谷がきつい練習をおざなりにすることもあったことも、同コーチはつけ加えている。
無論、白谷がNBAへ行くことを希望として掲げ、彼がそれを願ってもいい才の持ち主だからこそ、そのように伝えたに違いない。
メディアはなかば無責任にも、「第2の八村塁(NBAロサンゼルス・レイカーズ)」、「怪物」といった惹句で白谷を表現する。
おそらくそうした表現を用いるのは、少し早い。あくまで本当の勝負は、これからだからだ。
もちろん、白谷のこれからの成長過程を見届けることは周囲からすれば楽しみであり、世界の強豪と伍して戦うことを目標とする日本代表チームにとっても重要な選手となってくるかもしれない。
著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。
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