河村勇輝が読破した『SLAM DUNK(スラムダンク)』 背番号7に起因する宮城リョータともうひとつの理由 (2ページ目)
【たまには意味がないことも......】
そのインスタグラムのストーリーの写真で写っていた単行本の帯には、「オレは今なんだよ!!」という、桜木花道の有名なセリフがあった。自分もそういう気持ちでNBAに挑んでいるのだという意図でその帯がかけられた巻を上向きにしたのかと思って聞くと、河村からは、「あ、そうでした?」とあっけらかんとした答えが返ってきた。
「(帯のセリフは)全然意識していなかったです。わかりやすいほうがいいかなと思って、(表紙を見せる配置に)しただけで、全然意味はないです」
取材者としての教訓。河村のすべての行動に意味があるわけではない......らしい。
12月27日、Gリーグのメンフィス・ハッスル対サンディエゴ・クリッパーズでも、こんなことがあった。試合終盤、河村がドライブインから放ったレイアップが、リムをかすることなくバックボードに当たり、味方のコリン・キャッスルトンの手元に落ち、キャッスルトンがリバウンドからシュートを決めた。もしかすると、これはシュートに見せかけたパスだったのだろうか。そう思って試合後に河村に聞くと、彼は苦笑しながら「あれは普通にレイアップでした。コントロールをミスって、バックボードにぶち当てたっていう、ただそれだけです」と明かした。正直にそう言ってから、こうつけ加えた。
「ま、でもそういったバックボードを使ったバスもジャ(・モラント/グリズリーズのエース)とかは結構使ったりするので、そういったのも練習できればいいなとは思ってます」
どうやら、またこちらが深読みをしすぎてしまったようだ。
それでも、すべての行動に意味があると思いたくなるぐらい、アメリカに来てからの河村はいろいろなことを考えて、実践し、ミスからも学び、吸収して、成長している。ふたつの新しい背番号をつけてのアメリカでの新しいチャレンジは、見ているほうにも刺激的でワクワクさせられる。
著者プロフィール
宮地陽子 (みやじ・ようこ)
スポーツライター。東京都出身。アメリカを拠点にNBA取材歴30年余。アメリカで活動する日本人選手やバスケットボール国際大会も取材。著書に『The Man〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)、2023年1月発売の共著に『スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ』(集英社)。
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