河村勇輝が向き合う課題の3ポイントシュートと辛くも楽しいアメリカ挑戦の日々「トータルで見ればすべて幸せだなって毎日感じている」 (2ページ目)
【「修行」は辛いけど楽しいもの】
もちろん、3Pが入らないことに対して何の対策もとっていないわけでもない。
「今、自分のシュートフォームだったり、シュートのアーチの部分でいろいろ改善中です。NBAで練習していても、やっぱりもっとクイックネス(素早いシュートリリース)が必要だし、シュートアーチも、もう少し高く打たないとやっていけないなっていうのは感じていたので。だからと言って外していいわけではないと思いますし、いい方向には行っていることは自分の感覚でも感じているので、そこはしっかり、もっともっと早く決めきれるように頑張りたいなと思っています」
こう語った5日後の12月27日、背番号7をつけたハッスルでの試合(サンディエゴ・クリッパーズ戦)で、河村は実に13本中7本の3Pを沈めた。
試合後に河村は言った。
「やっぱり、準備の段階でいろんなことを試しながらやってきました。Gリーグショーケースの試合からこの試合まで4日ぐらいはあったので、そこでしっかりとシュートを打ち込んで、3Pの修正ができたことはよかったと思います」
もちろん、3Pが好調な試合が1回あっただけですべてが解決というわけではない。それでも、こうして目の前の課題に取り組み、修正し、練習し、試合で結果が出すことで、NBAでの成功への扉がひとつずつ開かれていく。それこそが、河村が日本を発つ前にNBA挑戦について、「修行」という言葉で表現した姿勢そのものだ。
「修行」という言葉からは困難で辛いイメージがある。もちろん、それもそうなのだが、だからといって楽しんでいないわけではないとも言う。
「僕も大して強い人間ではないので、本当に大きな目標に対しての辛さっていうのはあります。でも、自分としては乗り越えられる力はあるなと思いますし、それを感じられてる、そんな環境に入れている幸せを感じてるっていう感じです。
グリズリーズのほうでは試合に出られなかったり、実力のなさを感じたりコテンパンにされる日々なので、自分の力のなさを痛感する毎日ですし、そういった意味では苦しいときはもちろんありますけど、その苦しみさえも幸せだなって思えるほど、バスケットが大好きっていうのもあります。僕が目指している最高峰のバスケットリーグは甘くないんだなっていううれしさもありますし、もちろん、そう簡単にはいかないことをわかったうえで(挑戦して)それを乗り越えてこそ、本当に力をつけられる。トータルで見ればすべて幸せだなって毎日感じています」
著者プロフィール
宮地陽子 (みやじ・ようこ)
スポーツライター。東京都出身。アメリカを拠点にNBA取材歴30年余。アメリカで活動する日本人選手やバスケットボール国際大会も取材。著書に『The Man〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)、2023年1月発売の共著に『スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ』(集英社)。
2 / 2