NBA伝説の名選手:チャウンシー・ビラップス 苦境を乗り越え、"真の勝者"となった不屈のポイントガード (3ページ目)
【チームの勝利を求め続けた玄人受けの名PG】
現役時代のキャリアを糧にヘッドコーチとしてもその手腕を発揮している photo by Getty Images PGとしては屈強な肉体(191㎝・95㎏)の持ち主だった男は、17年にわたるNBAキャリアでレギュラーシーズン通算1043試合に出場し、平均15.2得点、5.4アシストを記録。会場を釘づけにするような鮮やかなパスや豪快なダンクを炸裂させるような、身体能力を前面に押し出すプレーではなかったが、コート上の指揮官となって試合全体の流れを読み、チームを勝利へ導くという玄人好みのスタイルで成功を収めた。
持ち前のコートビジョンとスキルを武器に、意外性に富む鋭いパスでイージーショットへ繋げるパスをさばきつつ、狙いすましたかのように勝負どころで沈める3ポイントが効果抜群で、ピストンズ時代に"ミスター・ビッグショット"の異名がついた。また、チームがオフェンスで苦しんでいる時間帯では自らの身体を犠牲にして相手のファウルを誘発し、フリースローでつなぐしたたかさも兼備。フリースローは、NBA歴代7位の通算成功率89.4%と名手でもあった。
「私が言う"正しいプレー"、それはチームのためにプレーすることなんだ。オールスターゲーム出場や雑誌の表紙を飾るためにプレーすることはなかった。勝つため、チームメートたちを高めるためにプレーしてきたんだ。そうすることでオールスターになり、チャンピオンシップも勝ち獲ってきた。そして今、殿堂入りを飾ることができたんだ」
引退後、ビラップスの背番号1はピストンズの永久欠番となり、スポーツメディア『ESPN』でNBAアナリストもこなした。2020-21シーズンにクリッパーズでアシスタントコーチの経験を積み、翌2021-22シーズンからポートランド・トレイルブレイザーズで指揮を執っている。
NBAの世界でも"名選手、名監督にあらず"というケースがあるなか、今季で就任4年目を迎えたビラップスHCがブレイザーズを低迷脱却へ導くことができるか。引き続き注目していきたい。
【Profile】チャウンシー・ビラップス(Chauncey Billups)/1976年9月25日生まれ、アメリカ・コロラド州出身。1997年NBAドラフト1巡目3位指名
●NBA所属歴:ボストン・セルティックス(1997-98)―トロント・ラプターズ(1997-98)―デンバー・ナゲッツ(1998-99〜99-00途)―オーランド・マジック(1999-00)―ミネソタ・ティンバーウルブズ(2000-01〜2001-02)―デトロイト・ピストンズ(2002-03〜2008-09途)―デンバー・ナゲッツ(2008-09途〜2010-11途)―ニューヨーク・ニックス(2010-11)―ロサンゼルス・クリッパーズ(2011-12〜2012-13)―デトロイト・ピストンズ(2013-14)
●NBA王座:1回(2004)/ファイナルMVP1回(2004)
*所属歴以外のシーズン表記は後年(1979-80=1980)
著者プロフィール
秋山裕之 (あきやま・ひろゆき)
フリーランスライター。東京都出身。NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに転身し、現在は主にNBAのライターとして『バスケットボールキング』、『THE DIGEST』、『ダンクシュート』、『月刊バスケットボール』などへ寄稿している。
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