NBA伝説の名選手:パウ・ガソル「優雅なプレーでプロキャリアを戦い抜いたスペインの至宝」 (2ページ目)
【レイカーズでコービーと一時代を】
そんなガソルにNBAキャリアのターニングポイントが訪れる。2008年2月のトレードでレイカーズへ移籍し、コービー・ブライアントと一緒にプレーすることになったのだ。
ガソルは当時について、「彼(コービー)はもっといい選手になるようにと要求してきた。そこで私は彼のことを補完しよう、彼とあのチームが必要としていたことをできるだけ供給しようとやってきた。あのチームで2番目に素晴らしい選手になるべく、向上しなければいけなかった」とのちに明かしていた。
レイカーズのシステムへ速やかにアジャストしたガソルの貢献もあり、チームは2008年から3年連続でウェスタン・カンファレンスを制してファイナルに進出し、2009、2010年に2連覇を達成した。
その後、ガソルはケガもあってスタッツが徐々に下降も、NBAキャリア18シーズンで平均17.0得点、9.2リバウンド、3.2アシスト、1.6ブロックを残し、オールスターに6度、オールNBAチームには4度選ばれた。
今では外国籍出身選手が開幕時点で10シーズン連続100人を超え、ここ3シーズンは連続して120人以上もNBAチームに所属している。だが、ガソルがNBA入りする前の時点で、スペイン出身でプレーした選手は1986-87シーズンにポートランド・トレイルブレイザーズに所属したフェルナンド・マーティンのみだった。
そんな環境から数々の逆境を乗り越えた"スペインの至宝"は、NBAでもビッグマンとして十分通用することを証明。5歳下の弟マルクもNBA入りし、2015年のオールスターではガソル兄弟が揃って先発出場する快挙も達成した。
高さに加えて豊富なスキルも兼備したビッグマンは、得点・リバウンド・パスを難なくこなし、戦術理解度にも長けていた。巧みなムーブやフェイクを織り交ぜたポストプレーではフックショットやレイアップ、ダンクを決め、高い打点から繰り出すミッドレンジジャンパーは安定感抜群で、フリースローも得意だった。
リバウンド時のポジショニングが絶妙で、オープンコートのトランジションやポストからさばくパスも的確。フィジカル面で「ソフト」と指摘されることもあったが、長い間NBAのペイントエリアで戦い抜いてきた。
ガソルは2021年夏の東京五輪を終え、同年10月に現役引退を表明。2023年3月に背番号16がレイカーズの永久欠番となり、同年に文句なしで殿堂入りと、NBAで輝かしい実績を残した。
キャリア途中からワイルドなルックスに変貌し、内に秘めた情熱を前面に押し出すこともあったとはいえ、プレースタイルは実にしなやかかつ優雅だった。2002年のFIBA世界選手権(現ワールドカップ)でシニアチームデビューしたスペイン代表で、約20年間も活躍してきたことも特筆すべきだろう。
ガソルは代表チームでオリンピックとユーロバスケット(欧州選手権)へそれぞれ5度、世界選手権(現・ワールドカップ)にも3度出場。オリンピックでは3つのメダル(銀2、銅1)、ユーロバスケットでは5つ(金3,銀1、銅1)、世界選手権は2006年の日本大会で金メダルを手にして大会MVPにも選出された。
引退時、ガソルはオリンピック通算649得点で歴代3位、ユーロバスケットでは通算1183得点で堂々1位、世界選手権でも通算482得点で歴代8位の数字を積み上げてきた。
「ドリームチームが私にビジョンと、(NBA入りを)追い求める夢を与えてくれた。彼らが私の人生に強烈なインパクトをもたらしたんだ。あのチームがいなければ、今の私は存在しなかったかもしれない」
選手としてすばらしいキャリアを送ってきたガソル。今後はスペインの主砲かつNBAでも活躍してきた"優雅なビッグマン"に憧れて、NBAや国際大会で躍動する選手が出てくることだろう。
【Profile】パウ・ガソル(Pau Gasol)/1980年7月6日、スペイン・カタルーニャ州生まれ。2001年NBAドラフト1巡目3位指名(アトランタ・ホークス)。
●NBA所属歴:メンフィス・グリズリーズ(2001-02〜07-08途中)―ロサンゼルス・レイカーズ(07-08途中〜13-14)―シカゴ・ブルズ(14-15〜15-16)―サンアントニオ・スパーズ(16-17〜18-19途)―ミルウォーキー・バックス(18-19)
●NBA王座:2回(2009、10)/NBA新人王(2002)
●五輪代表歴:2008年北京五輪(2位)、12年ロンドン五輪(2位)、16年リオ五輪(3位)
*所属歴以外のシーズン表記は後年(1979-80=1980)
著者プロフィール
秋山裕之 (あきやま・ひろゆき)
フリーランスライター。東京都出身。NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに転身し、現在は主にNBAのライターとして『バスケットボールキング』、『THE DIGEST』、『ダンクシュート』、『月刊バスケットボール』などへ寄稿している。
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