日本バスケの至宝も31歳。6年ぶりに世界大会に挑む渡嘉敷来夢が「地味なんですけど...」と笑顔で言える理由 (3ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by AFLO

渡嘉敷加入の化学反応は?

 国際経験も日本代表だけでなく、2015年からWNBAのシアトル・ストームで3シーズン、日本でのようなナンバー1選手ではない扱いのなかで揉まれてきた。今でもアメリカやヨーロッパの試合を頻繁に見るという。ワールドカップで対戦する国々のことも、よくわかっているはずだ。

 ワールドカップ予選トーナメント前、渡嘉敷は「自分の考えていることがすべて正解だとは思わないし、年下の選手たちに考えを聞くこともある」と前置きしつつ、それでも「若い頃から日本代表やアメリカを経験していたので、その時から自信は持っていました」と、自身が辿ってきた道のりについての矜持も示している。

 冒頭で記したように、渡嘉敷にとって今回のワールドカップはリオオリンピック以来、6年ぶりの世界大会出場となる。本来ならば昨夏の東京オリンピック代表メンバーとなっているはずだったが、2020年末に右ひざ前十字じん帯を断裂する大ケガを負い、出場は叶わなかった。

「自分もその舞台に立ちたいし、負けたくない」

 渡嘉敷はパリオリンピックへの思いを口にする。

 東京オリンピックから1年が過ぎ、「出場できなかった悔しさはもう過去のものか」と問われた。それに対し、渡嘉敷は首を振った。

「オリンピックに出るまでこの気持ちは消化できないと思っています。ただ、メダル(獲得)は簡単じゃないし、31歳でベテラン枠に入っちゃっていますけど、やっぱりオリンピックが終わらないといろんな気持ちが残っちゃうと思うので、そこに向けて一日一日を全力で過ごしていきたいなと思います」

 いろんな気持ち、とは、おそらく「悔い」という意味であるはずだ。国内外で多くを成し遂げ、戦い続ける動機づけを求めるのも、若い頃ほど容易ではないだろう。

 だが、パリへ行き、そこで表彰台に上がるという目標は、今の渡嘉敷の背中を押すものであるに違いない。

 オリンピックで銀メダルを獲ったチームの次の一歩を、渡嘉敷という稀代の選手が融合することで、日本代表がいかに踏むのか。今回のワールドカップの興味深い見どころのひとつとなる。

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