渡邊雄太「いろいろ弱音を吐いた」。波乱万丈の4シーズン目で知ったNBAの厳しさ (3ページ目)

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

チームメイトの復活に学ぶ

 今シーズン渡邊が経験したことは、ほかの多くのNBA選手が辿ってきた道でもある。目的地への道は、必ずしも最短距離でまっすぐ続くとは限らない。時には逆戻りすることもある。前進しているのか、後退しているのかわからないこともある。

 努力したからといって、すぐに結果が見えるわけではない。うまくいかずに、精神的に追い込まれて、さらに調子を落としてしまうこともある。悩む理由は人それぞれだが、悩み、それを乗り越えようともがくことは、スーパースターでも、ロスター入りぎりぎりのところにいる選手でも、同じだ。

 たとえば、渡邊にとって身近なところでは、ラプターズのチームメイト、パスカル・シアカムもコロナ禍後にそんな経験をした。

 2018−19シーズンにNBAのモスト・インプルーブド・プレイヤー(年間で最も成長した選手)に選ばれたシアカムは、そのシーズンのラプターズの優勝にも大きく貢献。翌2020年にはオールスターにも選ばれた。

 しかし、コロナ禍に突入し、2020年夏にオーランドの「バブル(感染拡大防止のための隔離環境)」で開催された再開シーズンや、本拠地をカナダのトロントからアメリカのフロリダ州タンパベイに移した2020−21シーズンに環境の変化にうまく対応できず、コート上でもオフコートでも苦しんだ。

 それだけの経験をしたあと、今シーズンは再びオールスター級の活躍をして、チームを牽引するまでに復活した。そんなシアカムの復活を、渡邊も間近で見てきた。

「お手本がいるっていうのは、本当にありがたいこと。パスカルが去年、苦労していたのも間近で見ていましたし、逆に今年、彼がまたあれだけの結果を残せるようになって、あれだけのプレッシャーのなかで、今年みたいな結果を残せるっていうのは...(すばらしい)。

 彼も本当にハードワーカーで、練習前もいつも早くきて、練習に取り組んでいるのを知っていますし、試合の日でも、あれだけ長いこといつも試合に出ているのに、個人的なワークアウトもやって、身体のケアとかもしっかりやっている。この2シーズン、彼からも間近で本当にたくさん学ばせてもらった。自分も彼を見習って、今後もっともっとやっていける部分があるかなと思っています」

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