渡邊雄太がNBAの強豪・ラプターズと契約。想起する『スラムダンク』の名言 (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

「思っていた以上にいい選手だし、ロースター争いをしているライバルたちを上回るプレーをしている。ラプターズのプレースタイルにもフィットするね」

 あるトロント地元紙の記者は、プレシーズン中、筆者とのメッセージのやり取りの中でそう記した。その感想は、渡邊に馴染みがなかったラプターズ関係者、ファン、メディアに共通する思いだったはず。当の渡邊も、ようやく自身が力を出せる場所にたどり着いた手応えを感じているに違いない。

 昨季、渡邊はグリズリーズの下部リーグ(Gリーグ)で22戦に出場し、平均17.2得点、5.7リバウンドという堂々たる数字を残した。ただ、肝心のNBAでは18試合で平均5.8分のプレーにとどまり、2.0得点、1.5リバウンドに終わっている。

 バスケットボールに限らず、スポーツ選手にとって最もつらいのはプレー機会が得られないこと。特に、グリズリーズがプレーオフ候補へと躍進した昨季は、試合に出れないだけでなく、練習中のスクリメージにもほとんど入れなかったという。

 21日のリモート会見では、昨季にチーム内での存在価値を見失いかけたことを吐露した。辛抱強い渡邊は徹底して言い訳を避けてきたが、「もっとチャンスさえもらえれば」という思いがあったことは容易に想像できる。

 そんな悔しい経験も味わった26歳にとって、ここでラプターズのような強いチームから評価された意味は大きい。

「過去2年も(やるべきことを)徹底してやっていたんですけど、結果につながっていなかったので、『これが本当に正解なのか』という疑問が自分の中にありました。特に去年のシーズンはそうでしたね。ただ、トレーニングキャンプで、『このチームではそれが正しい』という確信に変わったんです」

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