渡邊雄太がNBAの強豪・ラプターズと契約。想起する『スラムダンク』の名言

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

「オレは間違ってはいなかった」

 名作バスケットボール漫画『スラムダンク』で、湘北高校の赤木剛憲が、神奈川県の絶対王者・海南大附属高校との試合中に心の中でそう叫ぶシーンがある。仲間たちが次々とやめていく中で、努力を続けてきたすべての思いが込められた名言だ。

 NBA屈指の強豪チームに力を認められた渡邊雄太も、同じような気持ちだったかもしれない。

ラプターズと2ウェイ契約を結んだ渡邊雄太ラプターズと2ウェイ契約を結んだ渡邊雄太 現地時間12月20日、7年連続でプレーオフに進出(2季前に初優勝)しているトロント・ラプターズが、渡邊と2ウェイ契約を結んだことを発表。その翌日、リモート会見に登場した渡邊の言葉と表情からは、トレーニングキャンプ、オープン戦で力を見せつけ、チームに存在価値を認めさせた喜びが滲んでいた。

「このプレシーズン、短い時間である程度いいプレーができたんじゃないかと、自分でも思っています。何か特別に、去年と違うことをやったというわけではない。今までやっていたことをいつもどおり徹底してやり、それが評価として、結果としてつながっていきました」

 プレシーズン3試合で、渡邊は平均9.9分をプレーし、4.7得点、3.7リバウンドをマーク。FG成功率57.1%、3ポイント成功率60.0%という数字が示すとおり、シュート精度の高さが目を引いた。この結果から、ラプターズは保証された契約を結んでいたひとりを含む3選手を解雇して、渡邊をチームに残すことを決めたのだ。

 渡邊は過去2年もメンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約を結んでいるため、「その位置に戻っただけ」と考えることもできる。ただ、キャンプに臨んだ際の渡邊はノンギャランティー契約(エグジビット10)の選手だった。そこから這い上がり、強豪チームとの2ウェイ契約にこぎつけたことには大きな価値があるだろう。

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