「虎」になった20歳。八村塁が日本男子バスケを変えていく (4ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

 八村のコミュニケーション能力の高さは、もともとの明るい性格もあるが、自分から入っていかなければ居場所がなくなるアメリカの地で、より身についたものだ。弱冠20歳にして置かれている環境の厳しさが、日本代表に合流して1カ月足らずでも適応できる力をつけていたのである。そして、ゴンザガ大のコーチたちに言わせれば「ルイはもっとやれる」のだという。

 今回のWindow3には、ゴンザガ大で八村のスキルコーチを担当しているリカルド・フォイスコーチ(通称リッキー)を含む2名のスタッフが同行していたが、リッキーコーチによれば、「もっと強く向かっていけるところがあったし、バスケットカウントも取れた」と要求は高い。

 オーストラリア戦での八村はまさしく『虎』になったが、ゴンザガ基準ではもっと闘志を出さなければ、その先――すなわち八村が目指すNCAAファイナル4やNBAの舞台には進めない、というわけだ。

 日本の選手たちがアグレッシブな姿勢になったのは、こうした八村が置かれているレベルの高さを知ったことによる刺激からだろう。八村も日本の選手が勝つために必要なアグレッシブさを出せるようになったと感じたからこそ「日本バスケ界が成長するための大事な1勝」だとオーストラリア戦後に言えたのだ。

 9月中旬にある2次ラウンドの2試合に向けて、八村は「僕としては出たい」と意欲的だ。そこでネックになるのは学業だ。NCAAでは既定の成績を得られなければ試合に出ることができず、そのため、夏休みに少しでも勉強を進めておかなければならない。

「勉強はいつもストレスですが、いろんな人の助けを借りながらやっています」と語る八村のメンタリティは、バスケの向上だけではなく、学業を頑張る忍耐からも培われている。この夏の八村の日本代表参戦は、自身がさらなる虎になるためにも、日本の選手がたくましくなるためにも必要なステップだった。

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