「虎」になった20歳。八村塁が日本男子バスケを変えていく (3ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

 彼は高校時代も、U19代表でも、日本では一番の『虎』だったが、今求められているのはNCAAトーナメントのような大舞台で自分の持ち味を存分に出すことであり、普段の練習からエナジーを出し続ける基準値を上げること。それこそが、彼が目指すNBAに近づくことになる。

 そこで、6月から加勢したファジーカスとともに、練習からチームメイトに自信を注入するプレーを見せて牽引していった。八村は以前から日本代表戦を見ては「攻め気がないと感じていたので、もっとアグレッシブさを出さないと勝てないと思っていた」からだ。

 確かにこれまでの日本は、接戦を勝ち切れずに自信を喪失していた。とはいえ、20歳の大学生に「自信がない」「攻め気がない」と言われて、先輩たちは悔しくはないのだろうか。キャプテンの篠山竜青はこう語る。

「そう言われたら本当は悔しいと思うのが正解なのかもしれませんが、僕個人としては悔しさがないんですよ。彼の無邪気さや人懐っこさがそう思わせるのか、抜群の明るさで僕たちとコミュニケーションを図って接している。それは彼の努力だと思うのです。ニックとの会話にしても、彼は英語ができるからニックのフラストレーションも溜まらない。塁の姿勢は僕らをもっと頑張らなきゃと思わせてくれるもので、やっぱり僕たちには闘争心が欠けていたのだと気づかされました」

 だからこそ――、と篠山は決意表明を続ける。

「これからは塁がいないときもありますが、『塁がいないから負けた』と言われないようにしなきゃいけない。オーストラリア戦の勝利をきっかけに、僕ら国内の選手はもっとやらなくては、というモチベーションができました」

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