涙のレブロン。前を向くカリー。NBAファイナル、新たな物語の始まり

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro  photo by Getty Images

 正確に計測するなら、わずか3分46秒......。しかし、J・R・スミス(クリーブランド・キャブス/SG)は、「まるで3日間のようだった」と感じた。そして、同じ時間帯をカイリー・アービング(キャブス/PG)は、「先に決めたほうが優勝する」と予感していた。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

優勝の瞬間、レブロン・ジェームズ(左)は涙を流しながら声をあげた優勝の瞬間、レブロン・ジェームズ(左)は涙を流しながら声をあげた 3勝3敗で迎えた第7戦、第4クォーター残り4分39秒。クレイ・トンプソン(ゴールデンステート・ウォリアーズ/SG)がレイアップを沈め、スコアは89対89のタイに。そこから、残り53秒になるまでの3分46秒の間、両チームの気迫のこもった守り合いは続き、両軍それぞれ6本のシュートを放つも決めきれない。

 瞬(まばた)きさえも致命的になりかねない、濃密な時間が過ぎていく......。そして、そのときが来る。レギュラーシーズンMVPのステファン・カリー(ウォリアーズ/PG)の激しいマークをかいくぐり、ステップバックから放ったアービングのスリーポイントシュートは、美しい弧を描きながらネットを通過し、その均衡を破った。同時に、1万9596人のウォリアーズファンが埋め尽くすオラクル・アリーナを、絶望の空気が包み込む。

 「先に決めたほうが......」と予感していたアービングだったが、喜びを爆発させるより先に、コートを見渡した。

「クレイ(・トンプソン)とステフ(・カリー)のディフェンスにつかなければ」

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