【NBA】「キング」レブロンも従わせる39歳ヘッドコーチの特殊能力 (3ページ目)

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko  photo by AFLO

 その理由の一端がわかったのは、彼がコーチになって、あるエピソードを耳にしたときだった。2003年、ルーがオーランド・マジックと契約したとき、当時のヘッドコーチだったドク・リバースは、ルーにコーチの資質があるのを見抜き、「君はコーチに向いている。現役を引退したときには、私のところに来てコーチをしてみないか」と話したのだという。

 まだ、ルー自身もコーチになるなんて、考えてもいなかったころだ。リバースはそのシーズンが始まって間もなく、開幕から11試合で成績不振(1勝10敗)を理由にマジックのヘッドコーチを解雇されたのだが、その短い間にルーの資質を見抜き、彼にコーチの種を植えつけた。

 リバースが注目したのは、ルーのコミュニケーション能力だった。単に人と話ができるだけでなく、真実を、相手を傷つけることなく伝えることができる人間だということに気づいたのだ。

「あれは才能だ」と、リバースは言う。

 思えば、ガーネットらがルーを親友として大切にし、人生の岐路で大事な相談をしていたのも、自分のことを考えたうえで、きちんと"真実"を伝えてくれたからではないだろうか。単に耳障りのいいことを言うだけの友人ではなく、他人のように批判だけをするのでもなく、相手をおもんばかって真実を伝える――。それこそが、ルーのコーチとして、人間としての魅力だった。

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