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【NBA】なぜレブロンはダンカンに二度負けたのか? (2ページ目)

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro photo by Getty Images

 その直後、レブロンはダンカンに歩み寄り、コート上でハグをしている。

 その光景に、既視感を覚えた――。

 時計の針を戻せば、レブロンとダンカンがファイナルの舞台で初めて顔を合わせたのは、2007年。デビュー4年目、当時22歳のレブロンは、クリーブランド・キャバリアーズを球団史上初めてファイナルに導いた。しかし、ダンカン率いるスパーズにスイープ(4連敗)される結果に......。試合後、祝福に訪れたレブロンに、いつもは口数の少ないダンカンは、「今回は優勝を譲ってくれたことに感謝する」と言葉をかけ、ハグをしながらこう続けた。

「歩みを止めるな。このままの調子で進め。チームを導け。このリーグは、お前のものになるだろう」

 その言葉どおり、翌年からの7年間で、レブロンは4度のシーズンMVP、2度のファイナルMVPを獲得。まさに、リーグは「レブロンのもの」となった。そして、昨年のファイナルではダンカンにリベンジを果たし、リーグ2連覇も成し遂げている。

 新たなレジェンドが、旧レジェンドから味わった挫折を乗り越え、その歴史を刻んでいく。感動的で、理想的な、美しい物語だ――。

 しかし今年、スリーピートの偉業に挑んだレブロンを阻んだのは、再びダンカンだった。こんな物語は、シナリオライターでもつむげない。

 昨年、打ち破ったはずのスパーズに敗れたヒート。ヒートにはなく、スパーズにあったもの......、言い換えれば、レブロンにはなく、ダンカンにあったものがあるとするならば、そのひとつは急成長を遂げた若手の存在だ。個人名を挙げるなら、ファイナルMVPを獲得した22歳のクワイ・レナードだ。

 ヒートのホームゲームとなった第3戦。デビュー3年目のレナードはレブロンとマッチアップし、ディフェンダーとして輝きを放つと同時に、3ポイントシュート3本を含む29得点を挙げた。レナードにとって1試合29得点は、高校、大学、NBA、すべての試合を通してのキャリアハイ。つまり、NBAファイナルという最高の舞台で、最高のプレイヤーを相手に、生涯最高のプレイを見せたのだ。

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