【NBA】マイアミ・ヒート、スリーピートの可能性 (3ページ目)

  • 佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi 是枝右恭●写真 photo by Koreeda Ukyo, AFLO

 今シーズン、ヒートは新しい選手をほとんど獲得しませんでした。しかし、チームとしてのレベルはグッと上がったように感じます。ただ、昨シーズンから在籍している選手個々のレベルが上がったというわけではありません。チーム全体として、ものすごく機能しているという印象を受けるのです。どんなに素晴らしい選手を獲得しても、チームとして機能しなければ何の意味もありません。それは昨年、ドワイト・ハワードを生かしきれなかったロサンゼルス・レイカーズの例を見れば明らかでしょう。マリオ・チャルマースやノリス・コールのPGコンビ、そしてアンダーセンやバティエなどの控えメンバーがスタッツ(個人成績)以上のインパクトを残せているのは、レブロンやウェイドら主力が、「フォア・ザ・チーム」の精神で仲間をサポートしているからです。逆にレブロンが1試合60点取るようなゲームをすれば、チーム全体として100点以上、取れないかもしれません。チーム一丸となったほうが得点を多く奪えることを、ヒートは改めて気付いたのだと思います。

 そういうふうに変化したのは、やはり2連覇を成し遂げたからではないでしょうか。なぜならば今シーズン、チームとして目指すものが「1点」に絞られたからです。それはつまり、「スリーピート(3連覇)」に他なりません。もちろん、3連覇は決して簡単なことではありません。しかし、2連覇より3連覇のほうが、自分たちの目標設定がはっきりとすると思うのです。「今シーズンは優勝しかない」と。昨シーズンはまだ、スタッツに意識が傾いてしまう選手も多かったと思います。しかし今シーズンの選手の目標は、「スリーピート」のみ。それほど、3連覇という偉業は、選手の気持ちを迷わすことなく、モチベーションを高めるものだと思います。

 すばり、ヒートが3連覇を達成する可能性は、70パーセントぐらいではないでしょうか。そのぐらい、シーズン序盤のヒートの出来栄えは素晴らしい。オープニングゲームのブルズ戦を筆頭に、イースタンの強豪相手に余裕を感じさせながらゲームを支配していく様(さま)は、まさに王者の貫禄です。こんな成熟度の高いチームに対峙できる相手は出てくるのでしょうか。ヒートがこのままVロードを走っていくのか、そしてライバルが今後どのくらい成長してくるのか、注目したいと思います。

取材協力:WOWOW
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プロフィール

  • 佐古賢一

    佐古賢一 (さこ・けんいち)

    1970年7月17日生まれ、神奈川県出身。179cm/ポイントガード。北陸高→中央大→いすゞ自動車→アイシン精機。日本を代表する司令塔として活躍し、『ミスターバスケットボール』と呼ばれる。的確な判断力と要所の得点力で、JBLリーグ優勝9回、全日本選手権優勝12回を果たす。2011年に現役引退。
    WOWOW(http://www.wowow.co.jp/sports/nba/)でNBA解説など活躍の場を広げている。現在はJBA理事ナショナル男子を担当。近況はコチラ

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