【NBA】スター不在のグリズリーズが、なぜレイカーズより強いのか? (2ページ目)

  • 佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi
  • photo by AFLO

グリズリーズを「不思議なチーム」と評する佐古氏グリズリーズを「不思議なチーム」と評する佐古氏 ただ、グリズリーズというチームは、NBAの中でもちょっと不思議なチームだと思います。というのも、スター選手がいない代わりに、毎試合、誰がブレイクするのか本当に分からないからです。ロサンゼルス・レイカーズを106対93で破った試合(1月23日)でも、コンリーが試合の流れを作っていると思ったら、いつの間にかアレンがコートを掌握していたり......。そしてディフェンスありきと思いきや、ゲイやランドルフがいい場面でシュートを決めてくるんです。

 たとえば、ディフェンスシステムが確立し、選手の役割もはっきりしているシカゴ・ブルズが相手なら、「今日は誰をマークして、こういうマッチアップで対抗しよう」という風に、ゲームプランも立てやすいと思います。しかしグリズリーズのように、ディフェンス重視だと思っていたのに意外な選手が連続してシュートを決め出すと、相手チームはゲームプランを急きょ変更しなければなりません。

 もし、僕がグリズリーズと対戦することになったら、正直言って怖いなって思います。的が絞れない、展開が読めない、というゲームほどやりづらいことはありません。今のNBAで「グリズリーズはやりやすい」と感じているチームは皆無ではないでしょうか。先日のレイカーズも、まったく仕事をさせてもらえませんでした。コービー・ブライアントもスティーブ・ナッシュもゲームを作ることができず、ドワイト・ハワードに至っては、肩を痛めたとはいえ2点しか奪えていません。スター軍団ですら混乱させてしまうグリズリーズは、実に興味深いチームです。

 今年、もしくは来シーズン、グリズリーズはいよいよ勝負に出ると思います。ただ、唯一の難問は、完成されたスターター5人に「あと一歩、どう手を加えるか?」でしょう。グリズリーズというチームは、単に「選手を補強すればいい」という話ではないように感じるからです。もしかしたら、スターターの5人の誰かを放出するか、もしくはトレードで交換したほうが、さらに伸びるかもしれません。

 2011年、タイソン・チャンドラーを獲得したニックスは、カーメロ・アンソニーとアマーレ・スタウダマイアーで『ビッグ3』を形成しました。しかし実際は、誰かひとりをケガで欠いているときほうが、チームとして結果を残せたのです。グリズリーズも同じように、どの穴を埋めれば優勝を狙えるとは言いづらいチーム。そこも読めないところがグリズリーズの不思議な魅力でもあるのでしょうが、今後、フロントがどういう決断をするのか注目です。

※記録は1月28日現在

取材協力:WOWOW
2012-13シーズン好評放送中!人気カードを毎週5試合ハイビジョン生中継!
WOWOW NBA ONLINEはこちら


プロフィール

  • 佐古賢一

    佐古賢一 (さこ・けんいち)

    1970年7月17日生まれ、神奈川県出身。179cm/ポイントガード。北陸高→中央大→いすゞ自動車→アイシン精機。日本を代表する司令塔として活躍し、『ミスターバスケットボール』と呼ばれる。的確な判断力と要所の得点力で、JBLリーグ優勝9回、全日本選手権優勝12回を果たす。2011年に現役引退。
    WOWOW(http://www.wowow.co.jp/sports/nba/)でNBA解説など活躍の場を広げている。現在はJBA理事ナショナル男子を担当。近況はコチラ

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る