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【F1】ホンダの「エンジンが壊れるPUは狙っても作れない」と浅木泰昭 レギュレーション一部変更後の開発競争の行方は (3ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

【ホンダの振動問題の背景とは......】

 私は2024年3月に初の著書『危機を乗り越える力』を上梓させていただき、そのなかでこう記しました。

「2026年からの新しいレギュレーションでは電動パワーが拡大されてモーターも重要になってきますが、モーターに関しては性能というよりも、どのように搭載するのかが鍵になってくると思っています。新しいレギュレーションではモーターをエンジンに搭載するのではなくて、シャシーに取り付けられることになります。

 そうするとモーターの駆動反力を車体が受けてひずみが生まれます。車体のねじれや共振が発生しますから、耐久性の確保は技術的に難しい課題だと思います。エンジン屋と車体屋が一緒になって考えて、問題を解決していかなければなりません。

 そこだけに限らず、エンジン屋と車体屋が一緒になって解決しなければならない課題はたくさん出てくると思います。だから私は、アストンマーティンとホンダで早くチームを作って、問題点をどうするのかという話に入れと退職前に後輩たちに口を酸っぱく言ってきました......」

 今シーズンのレギュレーションではMGU-K(運動エネルギー回生システム)を含めたPUをどのように車体に搭載して、振動や駆動力にどう耐えるようにするのかというのが肝なんです。それをメルセデスやフェラーリのワークス勢は十分に把握し、しっかりと対応してきました。

 ところがアストンマーティン・ホンダは結果的にはうまくできなかった。でも私の考えでは、ホンダの人間は事前に問題を把握していたと思います。私は退職前に、後輩たちに何度も繰り返し言ってきましたし、バッテリーが壊れるほどの振動があったというのは見ればわかりますから。

 ホンダのスタッフは量産車も経験している人間がたくさんいますので、どんなことがあれば振動が起きて、どんなことをすれば危ないのかというのはわかっているはずなんです。

 だけどホンダ開発陣の「このままではマズい」という意見をアストンマーティンに聞いてもらえなかったか、あるいはホンダ社内で開発陣の意見がリーダーにしっかりと伝わらなかったか、そのどちらかしか考えられません。

つづく

<プロフィール>
浅木泰昭 あさき・やすあき/1958年、広島県生まれ。1981年に本田技術研究所に入社し、第2期ホンダF1、初代オデッセイ、アコード、N-BOXなどの開発に携わる。2017年から第4期ホンダF1に復帰し、2021年までパワーユニット開発の陣頭指揮を執る。第4期活動の最終年となった2021年シーズン、ホンダは30年ぶりのタイトルを獲得。2023年春、ホンダを定年退職。現在はF1コメンテーターとして活躍。初の著書『危機を乗り越える力 ホンダF1を世界一に導いた技術者のどん底からの挑戦』(集英社インターナショナル)が好評発売中。

著者プロフィール

  • 川原田剛

    川原田剛 (かわらだ・つよし)

    1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。

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