【F1】角田裕毅は9位でも「込み上げるものがあった」 元チームメイトの3位表彰台と比べる必要はない (2ページ目)
【レース継続が難しいほどの状況】
その一方で角田は、ここでピットインした際に大きな問題を抱えることになった。
「詳しいことは言えませんけど、最初はセーフティカーに追いついていけないくらいの問題を抱えていて、セーフティカーのほうが速いくらいでした」
ピットアウトしてスロットルペダルを踏み込んでも、加速していかない──。
これは、ペダルの踏み方に対してエンジン側のトルクをどれだけ出すかという「ペダルマップ」が、ピットストップ用のままになってしまったために起きた事象だった。
80km/h制限で走るピットレーンでは、1000馬力を生み出す強大なトルクは必要ない。しかし、ピットストップからの発進時には最大限の加速が必要だ。だから、ペダルの下のほうはトルクが薄く、上のほうはふだんどおりのトルクが出るような特殊な設定を、ピットストップ時には使うのだ。
この「ペダルマップ」はレース走行中に変更することは許されていないため、コースに復帰するまでにレース用に戻す必要があった。だが、ピットレーンの短いザントフォールト・サーキットゆえにその操作が遅れてしまい、このような異例の事態が起きてしまったのだ。
角田はスムーズなスロットル操作ができないペダルマップで、残り15周を戦わなければならなくなってしまった。
本来なら、レース継続が難しいほどの状況だ。しかし、セーフティカー走行中に大急ぎでこのペダルマップでのエンジン挙動を習熟した角田は、リスタートでアロンソを抜き、さらにピエール・ガスリー(アルピーヌ)も抜いてポジションを上げていった。
これがいかに難しいことだったのか、ホンダの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーはこう説明する。
「特性が全然違うので、そのマップで走るのは、コーナーの立ち上がりなどでは相当運転しづらくて大変だったと思います。我々もレースエンジニアに対して『こういうことを確認してほしい』と会話しながら、無線でドライバーとやりとりしました。
セーフティカーラン中に走りながら、ドライバーに『このペダルマップだと、こういうトルクの出方になる』ことを習熟し、感覚をアジャストしてもらいました。もう終わった、という状況でしたけど、そこからよく適応して、何台か抜き、本当にいい仕事をしてくれたと思います」
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