F1レッドブル失速の背景にある「弱点」とは? 中野信治が読み解くチャンピオン争いの行方 (2ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

【オールラウンダーに進化したマクラーレン】

 レッドブルに代わって優勝争いの中心に躍進したマクラーレンとメルセデスはチャンピオンチームであるレッドブルのコンセプトを取り入れつつ、他にも何かやるべきだと考えて独自の開発を進めてきたのだと思います。

インタビューに応じる中野信治氏 撮影/村上庄吾インタビューに応じる中野信治氏 撮影/村上庄吾この記事に関連する写真を見る

 当然、フェラーリも同じようにやってきたと思いますが、コーナーでのクルマの動きやバランスなどのデータを見ると、基本的に前年と傾向は変わっていません。

 クルマ的に言うと、基本的に前年モデルのコンセプトを踏襲してマシンを進化させてきたのがレッドブルとフェラーリ、前年モデルを全面的に改良してきたマクラーレンとメルセデスの2グループに分けられると思います。

 おそらく後者は、チームのデザイングループが2024年型マシンのプラットフォームをつくる段階で何か新しいアイデアを見つけていて、それを盛り込んだものを開幕版のマシンとして持ち込んだ。

 でも、マクラーレンとメルセデスはともに最初のうちはマシンの理解に時間かかっていましたが、理解が深まり、アップデートを重ねていくと最適化が進み、自分たちが当初描いていた数値をきっちり取れるようになってきたように見えます。

 前半戦最後のベルギーGP終了時点では、コースの特性によって多少の上下はありますが、トータルではマクラーレンが一番速いのかなと思います。

 マクラーレンはもともと低速コースに強く、ベルギーGPの舞台となるF1屈指の高速コース、スパ・フランコルシャンは苦戦すると予想していました。なぜなら、マクラーレンは直線が遅く、けっこうダウンフォースがついてないと速さを発揮できないコーナーリングマシンだったからです。

 でもスパでのマクラーレンは速かった。もう今のマクラーレンには弱点がないと正直感じています。オールラウンドのマシンに仕上がってきています。

 夏休み前の4戦で3勝したメルセデスはストレート区間が速く、どんなコーナーもそこそこ速いというバランスの取れたマシンです。

 リアがすごく安定しているので、ステアリングの舵角は大きくアンダーステア気味のマシンではありますが、タイヤに優しいのでレースに強いのが特徴です。

 ただ予選で一発のタイムを出すのは苦戦しています。フロントがガンガン入ってくるマシンではないので、低速コーナーでぐいぐい回っていくマクラーレンに比べて負けてしまう。

 決勝に関しては、タイヤに優しいので、燃料が軽くなったレース後半に速くなるという強みを活かして勝負している印象です。あと、メルセデスは戦略もうまいので、夏休み前の4戦で3勝という好成績を残すことができたと思います。

 この戦略という部分では、マクラーレンは長い間、チャンピオン争いから離れていたこともあり、メルセデスやレッドブルに比べると明らかに劣っています。チームオーダーを巡って混乱したハンガリーGPがいい例ですが、チームがふたりのドライバーをコントロールしきれてないところがあります。

 チームの戦略の立て方も久しぶりに優勝争い、チャンピオン争いにからめるかもしれないということでプレッシャーがかかって、ミスをしているというのが現状です。ここから修正していかないと、タイトル獲得は難しくなってくると思います。

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